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夏油先輩と2度目の任務を共にしたあの日から。夏油先輩と″惚れ薬″という秘密を共有したあの夜から
夏油先輩と契約を交わしたあの時間から1週間以上は過ぎたであろうとある日
日に日に蒸し暑さのせいで早朝に目を覚ますことが増えてきた今日この頃。今日もいつものように酷い寝癖を櫛で梳かし終えてから代わり映えのない1日へと足を踏み出す
ゆらゆらと流れ行く時間を肌で感じ同学年の灰原君と七海君と並んで授業を聞き、訓練という名前のしごきを受けた
しかしそんな代わり映えのない日常の中で唯一、変わったことがある。それは
「お疲れ、A」
「お疲れ様です!夏油先輩!」
夏油先輩と今まで少し遠かった距離があの約束をした日を境に一気に近くなったということだ
夕刻前。放課後の時間に値する現在
まだまだ天井には淡い青色が広がっておりその先は遠くへと溶けている
へらりとその柔らかな声に笑みを浮かべながら応えると先輩も目尻をふにゃりと緩めた
東京都立呪術高等専門学校。呪霊を呪いの力で祓う呪術師の教育を目的とする学校
そんな学び舎の2年に在籍している夏油傑先輩は元々、呪術師を生業とする家の生まれではなく非呪術師側で生きてきたらしい
だが、今では一級術師として神童と謳われる五条先輩と並んで最強と呼ばれているのだ
それに比べ呪術師を生業とし呪術師の名家として名を轟かせる″亜島″という自分の存在を肯定する術を持っているにも関わらず二級術師止まりの自分に渇いた何かが込み上がってくるのを感じる
これでは実家で見送ってくれた両親にも10以上離れている妹にも顔が見せられないなと脳が苦い笑みを浮かべた
だからこそ私は純粋に夏油傑という人間を″凄い″と思い″尊敬″している
「夏油先輩、例のブツはどうでしょうか?」
「すまない。今回も残念ながら…」
「うう、そうなんですね」
雲一つない澄み渡る青空を窓越しに視界の隅に置き、日課となりつつある惚れ薬の進捗状況を問いかけながら夏油先輩と並んで寮へと続く廊下を歩む
あの日から夏油先輩と会話をする機会が増えているのは周囲も気づくほどの事実だった
先刻も一日の終わりを示す機械音が鳴り響いた直後に1年の教室へとやって来た夏油先輩。彼に手招きされるままその隣へと並ぶとさらっと帰り道へとエスコートされる
後方から羨ましそうに嘆く灰原君と鋭利な七海君の視線を感じながらも呼ばれるがままついて行くと夏油先輩の学生服から柔軟剤の柔らかな匂いが鼻をくすぐっていった
″先輩と後輩″
これが私と隣の人物を表す言葉であり引かれているラインである
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うさ - 続きがとても気になりますo(^o^)o (2021年7月13日 15時) (レス) id: c396716e54 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - こいみさん» コメントありがとうございます。この度は私の作品を読んでくれてありがとうございますっ!!こいみちゃんにそう言って貰えてとても嬉しいですっご期待に添えられるように頑張ります!!お付き合いの程お願い致しますっっ (2021年3月25日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
こいみ(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。砂ちゃんのお話が本当に大好きです。夏のお話書いてくれて、すごく嬉しいです!!更新楽しみにしてます、頑張ってください!! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 5a5862897c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂時計 | 作成日時:2021年3月7日 19時