■01% ページ3
“狗巻棘“
その名前を聞いた瞬間、自身の身体中の血液が沸騰するかのように湧き立ち始める。
脳裏に刻まれたその人物についてを、思考が引っ張り出し始める。
自分より数センチぐらい高い目線、薄い色味のサラサラとした髪の毛。
ネックウォーマーやマスク等でいつもは隠されている口の端に蛇の目、舌に牙という狗巻家の呪印が覗く姿を思い描く。
そして、ここ1年近くまともに会話を交わしていないことを思い出した。
私が9歳、棘君が10歳のときに先代である母と狗巻家の当主によって私と彼は許嫁という間柄になった。
防御壁の威力はそこまで強力ではないが壁を発動できる範囲が自分中心に3kmほどとされる1歳年上の姉と、防御壁の威力は一族の中でも飛び抜けて強力だが壁の発動範囲が自分を中心に100mほどの狭さの私
当主になるのはやはり多用性のある姉だった。
そのため、幼い時に当主だった母と狗巻の当主の間で交わされた互いに互いのテリトリーに干渉しないという契約の担保として彼の許嫁となった。
大好きな棘君と将来大きくなっても一緒に居れるという事が嬉しくて眠れなかった私はこっそり寝室を抜け出して、声のする部屋へと吸い寄せられていく。
そして、この許嫁という契約の裏に隠された事実を深夜に父と母の会話を盗み聞きをしている最中に幼い私は知ってしまったのだ。
私欲にまみれた契約
嬉嬉としてそれを受け入れてしまった自分に、そして喜んで首を縦に振って受け入れた棘君に嫌悪を覚えた。
目の前が真っ黒に染まり、呼吸が歪に乱れ始める。
お腹の底をどろどろとした気持ちの悪いもので掻き回されるそんな感覚に陥ったのを今でも覚えている。
それ以降、大好きだった彼を避けるようになっていった。
元々、産まれた時から呪力が強い私は彼の呪言も効かない防御壁を常日頃から自身に纏うように発動させているということで幼い時に棘君の話し相手として呼ばれたことが出会いだった
あんなに大好きだったのに、許嫁となったあの日から7年間、私は棘君を避け続けた
理由なんてわからない
何故?と問われても応えられない
ただ、感情も気持ちも愛も存在しない将来の約束に昂っていた気持ちが一気に凍りついたのだ。
たぶん、これが“嫌い“という感情なのだろう
「A、聞いているのか?わかったか?」
どうせ決定事項な癖にあくまで意思を確認している、というスタイルを貫く男に頷きという肯定の意思を見せる
喉の奥が酷く渇きを覚えた
380人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
砂時計(プロフ) - くるいばなさん» この度は、私のお話を最後まで読んでくださり、またコメントまでありがとうございます。くるいばな様のお心を私の作品という文字でいっぱいにすることができて嬉しいですっ、ありがとうございますっ!!また、他の作品でもお会いできることを願っておりますっ! (2021年1月18日 17時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
くるいばな(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方、雰囲気、お話の構成など全てに脱帽しました。これ程までに身を焦がれた小説を今まで読んだことがなかったので胸いっぱいです。まるで夜の空気に晒されているようでそれでいて暖かくなるような作品でした。更新お疲れ様でした。 (2021年1月17日 20時) (レス) id: e07b1cae6b (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - 花丸さん» 最後まで読んでくださり、またコメントまで下さりありがとうございますっ!!可愛いを被った男を見せて欲しさに書いたので伝わっていて嬉しい限りですっ。沢山のお褒めのお言葉本当にありがとうございます。次回作でも花丸様とお会い出来ることを密かに願っておりますっ (2020年12月20日 13時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
花丸(プロフ) - 完結おめでとうございます!強引な棘くん最高でした!特にキスシーン以降の描写が最高で、キュンキュンさせられっぱなしでした!いつも砂時計様の言葉選びのセンスに感服しております(;;) 棘くん推しには堪らないお話でした…更新お疲れ様でした! (2020年12月17日 20時) (レス) id: f266018fa7 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - koi31さん» こいみーちゃん!!作ったばかりの新作にまで来て下さりありがとうございますっ!!亀更新でまったりと頑張っていきます。何卒、お付き合いの程よろしくお願いしますっ(;_;) (2020年12月7日 22時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:砂時計 | 作成日時:2020年12月7日 1時