検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:277,126 hit

◇08% ページ10

「って、お誘いを受けたんですけど…、どうしたらいいですかね?」

「…俺は相談所じゃないんだが」

「いきなり過ぎてちょっと怪しさありますよね…?」


「…本当に手間がかかる奴らだな」


ひんやりとした冷房の空調が行き届いた甘い匂いをいっぱいに詰め込んだケーキ屋にて自身とお兄さんの言葉が飛び交い合う

わざと噛み合わないように紡いだ会話に対して目の前の人物の深い溜息が漏れる


深い緑色の髪の毛を揺らしながら眼鏡のブリッジを押さえるその姿を横目に声を吐き出す



ローズハートさんに予定を空けておけと言われ、数日が経ったとある休日

相談所と化したケーキ屋のお兄さんの元に上司の例のお誘いについての話を聞いてもらうためにやってきた私は到着直ぐにペラペラと話を始めた


もちろん、苺のタルトを毎回買って帰るのを忘れたことはないのでご安心を





「で、何に悩んでるんだ?その上司から誘われて良かったんじゃないのか?」


「そ、そりゃあ…、顔は良い人だし、尊敬してる上司なのでお誘いは嬉しいんですけど…」


彼の意図がわからなくて、不安なんです


静かな店内にゆったりしたBGMが鳴り響く
本音が濁った言葉によって掻き消される


胸の奥底でモヤモヤと渦巻く名前の分からない感情が嫌悪感を催す


私の言葉を聞き入れたお兄さんは少しだけ何かを考える様に目を伏せたが直ぐにいつもの優しそうな笑顔へと戻る

その笑顔に含まれた鋭い視線にぞくりと背筋が震える

前にも見た事のある表情だなと脳が呟きを漏らす



「とりあえず、行ってみたら良いと思うぞ」


何故か、妙に納得感のあるその言葉が耳に響く

甘いチョコレートを溶かしたような匂いが鼻を擽る

ショーケースの中に並ぶ彩り鮮やかなそれらが視界に色を添える


お兄さんの言葉がストンと心の中身へと浸透していき、それらをゆっくりと噛み締めながら受け止める


自分の中へと入ってきた言葉によってモヤモヤとした得体の知れない感情がさぁっと消えていった


リドル・ローズハートさんの事を意識してしまっているのは事実

いい歳した大人だからなのかそこに甘酸っぱいようなものなんて微塵もなくて単純に欲しいという欲求しか存在しない



何度も口にしたであろう上司の名前を思考する脳が呟く

たしかに、見えない彼の意図に不安はある

しかし、それ以上に自分をもしかしたら選んでくれるのではという淡い期待が浮上する




クリアになった視界に映るお兄さんにはい、と返事をした

◇09%→←◇07%



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (458 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
741人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

砂時計(プロフ) - 葵さん» 初めまして!コメントくださりありがとうございます!!可愛いですよねっ、描いてくださった友人のイラストを褒めてくださりありがとうございます!リドルさんの素敵なところをお届けできるように頑張って書いたのでそう言って頂けて嬉しいですっ!! (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - チーズ鍋さん» この度はお返事が遅くなってしまいすみませんっ私のお話を読んでくださりありがとうございます。私なりに綺麗な世界観を見せたいと思っていたのでそのようにお褒めいただけて本当に嬉しいですっ!!本当にありがとうございましたっ。 (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うおおおおぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!かわぇぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うるさいですよね。すみませんでした。ほんとリドル君スキッ! (2021年7月19日 15時) (レス) id: 4534ab9975 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ鍋 - 言葉選びが素晴らしく、本当に綺麗な文章でした。話の内容も面白く、しかも読みやすいので一気読みしてしまいました。この作品と出会えて良かったです。ありがとうございました。 (2020年10月16日 22時) (レス) id: 067328da22 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - バカさん» この作品を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!!初めてに私の作品を選んでいただけて大変嬉しく思います(><)お褒めの言葉本当に感激ですっっ!!他の作品でも貴方様にお会い出来ることを願っております(;_;)!本当にありがとうございます!! (2020年9月23日 1時) (レス) id: 47df7c7bae (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:砂時計 | 作成日時:2020年8月18日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。