今夜もう一度君を抱く【ツイステ】

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｢あれ…！？｣



あの一夜から1週間以上は経ったとある休日

ふと、走馬灯のように今日までの目まぐるしい毎日が蘇り疑問を感じた

お休みということもありお気に入りのケーキ屋さんに行くために外出している最中、それは起こった


いつもはひとつに束ねて邪魔にならないようにお団子にしている髪の毛が括られていないためか揺れ動き、それに伴い声を荒らげる



｢え、あれ？？私、ローズハートさんに…何も言われていないような…｣



青色の雲ひとつない空模様が自身の体を見下ろす

夏に入る前という季節のせいか暖かくなりだした生温い風が頬を撫でる

思考内に再び浮上し始めた議案に表情が歪みを見せる



お酒の勢いで致してしまったあの案件について上司であるローズハートさんから、何ひとつ、そう何も言われていないのだ


匂わせのある言葉すら何もない


遂には、何も無かったのではないかというぐらいいつもと変わらないのだ。

仕事も会話も何もかも可笑しいぐらい普通なのだ


そう、いつも通りの怒りん坊ローズハートさんなのだ



普通さ、後輩の女の子と一夜過ごしちゃったら何かしらアクションを見せないかな？


気まずいとかさ、感想だったり、何かしら言葉はあるはずなのに、顔色ひとつ変えない



そこで、ふと脳がひとつの答えを導きだす
思考内が満場一致でその答えに賛同を示し挙手をする



｢…もしかして、ローズハートさん。相手が私だと気づいていないパターンだったり…しないかな｣


思考内を埋め尽くす朱色

艶やかさを醸し出すその灰色の瞳に自分が映ってすらいないのでは？と声を漏らす

思えば思うほどその可能性が拡大していき、最後にじくりと心臓が嫌な音を鳴らした








｢…お兄さんはどう思いますか？｣

｢どうって…、そうだな。案外恥ずかしがってるだけかもしれないぞ？｣

｢ははは。うちの上司に限ってそんなことあるわけないじゃないですか｣



彩り鮮やかなケーキやお菓子類がひんやりとした店内に置かれているショーケースに並んでいるのを横目に渇いた声を吐き出す


お酒の勢いで上司と致しちゃったんですよ

と、いつも通っているケーキ屋さんの優しそうな眼鏡のお兄さんに世間話をするかのように伝えるとその柔らかい営業スマイルに亀裂が入ったのはいうまでもない


そのままの流れで、上司が致したことについて何も言ってこないと、悩み事を添えると彼の深い緑色の髪の毛が大きく揺れた

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