今夜もう一度君を抱く【ツイステ】

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｢…わ、私は｣


ドクドクと、脈打つ鼓動に体が可笑しくなったのではないかと錯覚する

彼からの問いかけを一字一句、拾い上げ握りしめる手に力が篭った



はじまりは不純なものだったかもしれない

でも、あの一夜からローズハートさんを1人の男の人として見ている自分が居ることも

受付の女の子がローズハートさんの隣を歩いていた事に羨ましさと妬ましさ、嫉妬を感じていたことも

動機はどうであれ自分を見て欲しいと彼に願って、彼を欲していたことも


全てが真実であり全部が自分の感情の一部なんだと脳が言葉を告げる

たぶん、いや、きっとこれが好きという感情なんだろうとやっと認めれていなかった気持ちを受け入れることができた


ローズハートさんから渡された好意を受け取っても大丈夫なのかと不安も過ぎる反面、彼がどうしても欲しいと自身が叫ぶ声が聞こえる

こんな未熟者の私が彼なんかの隣に並んでもいいのか、不釣り合いなんかじゃないだろうか、とあげだしたらキリのないタラレバが広がり消え散る


こんなズルをしたような私でも欲を言ってあなたの隣に立つ権利を得てもいいのだろうか


そんな私の不安な気持ちを表したような表情を見たからなのか


｢愛している。だから、これからの未来を君と歩みたい｣


嫌なら拒絶してもらっても構わない

と、彼の口から安心させるようにつけ加え、紡がれた愛の告白に留めていたものが枷を失ったかのように溢れだした


ボロボロと流れでる涙が目尻を濡らし、視界に映る彼の朱色を滲ませる

どうしようもなく彼が愛しいと思考する脳が声を吐き出し、それら全てが自身の中で答えを導く



｢…っぐす…っは、いっ｣


呼吸が乱れ、零れ落ちる涙を何度も何度も赤くなるんじゃないかと言うぐらい拭う

この気持ちを伝えたいのに感情がぐちゃぐちゃのせいか上手く言葉にできなかった私は持っていたペンで殴り書くように目の前の用紙の右側に名前を記入する


そして、その歪な文字が書き足された婚姻届をローズハートさんに突きつけるように返した


嗚咽する私の答えに一瞬、驚きを見せるがすぐに嬉しさを滲ませた笑みへと表情を変える彼に胸が高鳴る



｢それが君の答えなんだね？｣

｢…なら、今夜もう一度君を抱くけど、問題はないね？｣


吐き出される甘い言葉に脳の動きが鈍くなる

彼の口から紡がれる息を吸う音と自身のしゃくりあげる声が交差する

深い夜が覗く室内に自身と彼の声が零れた



｢はい、…お願い、します｣

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