18 ページ20
「…少し俺の昔の話を聞いてくんねえか」
彼の渇いてかさかさとした言葉が宙を舞う。街灯で見えたその顔は初めて会った時に見せていた憎悪にまみれた表情だった。
「…うん」
自分なんかが聞いてもいいことなのだろうか
その深い深い彼の傷跡を見つめながら問いかけようとしたがぐっとその言葉を飲み込み、了承の意図を伝えた。
薄暗い帰宅路を2人並んでゆっくり歩きながら焦凍が口を開いたのをひたすら相槌をうちながら聞いた。
Ｎｏ．2、プロヒーローエンデヴァーは自分の野望のために母親の親族を丸め込みその個性を手に入れた。
そう。焦凍くんの親は少し前に問題になったという自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び結婚をするという所謂、個性婚だったのだ。
そして母親と父親の両方の個性を継いだ彼がつくられた。野望であるオールマイトを超えるために。
個性が発現してからオールマイトを超えるためにと強制的に訓練をさせられ、それらに耐えられなくなった母親は彼が5歳のときに壊れてしまったのだ。
「おまえの左側が醜いと母は俺に煮え湯を浴びせた」
その時に出来たのだと左目元のケロイドを指しながら声を震わせる。母親はその後、父親によって病院にいれられたと呟いた。
簡潔に深い深い憎悪の理由を私に話す焦凍くんの横顔が悲痛な叫び声を上げているように聞こえた
だからこそ父親の個性は使わずにヒーローになってエンデヴァーを完全否定してやる、と、焦凍くんはゆっくりゆっくりと呟くように話した
「…そっか」
「同情とかはいらねえ」
「うん」
「…お前のことが嫌でその拒絶したわけじゃねぇ、ってことを言いたかっただけだ」
小さな彼の抱えているその背景になんて言葉をかけていいのか言葉がでてこなかった。
照らされている街灯が焦凍くんの赤色と白色に影をつける。思っていた以上の深さに彼の心がいつか崩れてしまうのではないかと不安になる。
なんて答えるのが正しいのかなんてわからなかったが、
「なりたいヒーローに一緒になろう」
「焦凍くんの力でヒーローになって見せつけよう！！私が来たってね！」
悲鳴を上げて落ちてしまいそうになったら自分が隣で彼を支えて引き上げようとピースをつくり自信満々に見せる。
小さな少年にそれは間違っていると突きつけるのではなく、隣で彼の成長を見守ることに私は決めた
頭ごなしになんでもかんでも否定されたって絶対に聞かないことは前世の私が経験して感じたことだったから
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 235人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
砂時計(プロフ) - yuikaさん» コメントありがとうございます。この度はこの作品を見つけて下さり嬉しい限りでございます。そのお言葉を糧に細々と更新をしていこうと思ってますっ、これからも何卒お付き合いのほどお願いします(〃▽〃) (2021年8月19日 20時) (
レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
yuika(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです！思わず一気に読んでしまいました、、、！これからも頑張ってください！！！ (2020年3月29日 15時) (レス) id: 090e0c37e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：砂時計
| 作成日時：2020年1月21日 1時
