向日葵の咲くおうち ②【雪】 (ページ4)

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カリスマ美容師ですページ4

渡辺side

子供の頃あんなに嬉しかった誕生日も、大人になると呆気ないものだ。

誕生日だからといって何か特別なことがあるわけでもなく、もちろん仕事だって普通にある。

ここに引っ越してきてからは誰かの誕生日に『おめでとう』と声をかけたりはするけど、それだけだ。

本当にただ一つ歳を重ねるだけの日。

このままあっという間に30歳になりそうだな…と少し憂鬱な気持ちで迎えた朝。

仕事に行く準備をしようと部屋を出ると、そこには陽葵が立っていた。

陽葵『しょっぴー！おたんじょうびおめでとう！』

渡辺「えっ、ありがとう！」

陽葵『27さい！えらい！』

渡辺「えらい？笑」

陽葵『ままがいってたの！いきてるだけでえらいって！だからしょっぴー27ねんもいきててえらい！』

渡辺「ふっ、そんなこと初めて言われた。ありがとう、陽葵」

陽葵『うん！じゃあひまほいくえんいってくる！』

渡辺「はーい、今日も元気に頑張れよ〜！」

陽葵『しょっぴーもおちごとがんばってね！』

娘に『生きてるだけでえらい』って教えてるなんてAさんらしいな…と思いながら準備を済ませた俺は電車に乗って仕事場に向かった。

今日の予約を確認していると見覚えのある名前があり半信半疑で後輩に話しかける。

渡辺「ねぇ、この予約いつ入った？」

【あ、ついさっきお電話で。お知り合いですか？】

渡辺「んー。多分？」

【いや。なんすか、多分って。笑】

だって俺、聞いてないし！本人だよね？

今日の16時半から指名で【花澤 A】と入っている。

休憩中、AさんにLINEを送ると『陽葵がどうしてもお仕事してるしょっぴーに会いたいって言うから。それと私が翔太くんに髪の毛切って欲しかったの。ダメだった？』と返ってきた。

そんなこと言われて俺がダメなんて言えるわけないじゃん。笑

「待ってるから、気をつけて来てね」

『ありがとう！！！』

陽葵とAさんの喜ぶ顔が目に浮かんで、笑みがこぼれた。