065 ページ15
.
1人にしないと約束してから、本当に海人は龍斗を1人にはしなかった。
けれど海人は元々、スポットライトを浴びていたい人間ではない。本気でやりたいこともないし、踊ることは好きだし、となんとなくアイドルを続けていた中、撮影で行った美大で、本当にやりたいことを見つけたと言う。
「そんなに心配か」
「心配だよ。だって、お母さんのこともあったし」
「あぁ…結構な毒親だったって聞いたけど」
「やめなよ。亡くなった人のこと」
「相変わらず、正しいな」
苦笑した紫耀の前に、ぱたぱたと涙が落ちた。
「龍のことが心配。なのに、自分の夢を追いかけたいって思っちゃう。ねえ、これも正しい？」
涙に濡れるその澄んだ瞳がこの世界で汚れなかったことを、奇跡だと思った。
彼には永遠にそのままでいて欲しいと、そう思った。
「ねえ紫耀、教えてよ…どうすればいい？」
「……お前はいつも正しい。正しいよ。こんなクソみたいな世界、逃げられるうちに早く逃げろ。振り向くな」
「紫耀」
「心配しなくても、龍はお前についていったりしない。もうあいつは、この世界から逃げられない」
「なにそれ…どういう意味」
「それは…」
ハッと口を噤んだ紫耀に、海人は「ごめん」と呟いた。
「ごめん。オレたぶん知ってるわ、それ。
知ってるけど、口にしたくも、聞きたくもない」
.
車をマンションの駐車場で停め、優しく龍斗を揺り起こす。
「なんの夢見てたんだ？」
「……えっと…コンサート、の夢」
「え？コンサートしてるところか？何か思い出したのか？」
龍斗は首を横に振った。
「コンサート、見てる夢。
すごく幸せで…幸せすぎて、終わるのが怖かった。
終わった後に、何か怖いことが待ってる気がして」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LIKKA(プロフ) - みよさん» コメントありがとうございます…リトかんハマりかけてます。初っ端からクセの強い役で申し訳ないです（笑） (2020年8月7日 1時) (
レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
みよ(プロフ) - まさかのにしたくの登場に興奮しています笑 (2020年8月7日 1時) (レス) id: 9238d6c588 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LIKKA | 作成日時：2020年8月6日 21時
