WILD DOCTORＳ

君は天使 ページ7

「寺辻先生、先程小児科から
お電話ありました。」

内容をその医療秘書に聞くと、
啓司からの診察依頼だった。

「虐待の可能性があると…」

秘書も目を伏せ気味に話す。

「それなら入院だね？
今日の外来終わりに診るから、
内科に返信しておいて。
あと、小児男子でベッド空いてるか
ナースに確認ね。」

その子は五歳の男の子。
普通よりかなり小さい印象。
カルテを見ると体中に外傷。
それと今回は内臓に至る可能性ありか
担当は大樹先生か。

午前中にインターンに頼んでやってもらった箱庭では、部屋の隅に三人の人形、その斜め向かい側の角にひとり。
三人は両親と妹で、バランス的に父親が大きすぎた。
ひとりは自分だという。

他にもりんごの木のテストや、絵を書いて色を塗ってもらうテスト、他にもしてもらったが、どのテストにも顕著に父親からの虐待を伺わせる結果がみえた。

「僕は寺辻健一郎って言います。
　君のお名前と歳を教えて。」

あもちゃのたくさんある部屋で、遊ばせて話すけど、大人の男の人に怯えて遊べない。
おもちゃをお菓子に変えると、無心に
食べ始めた。

お昼もちゃんと食べたと聞いたのに
まるで詰め込んでいるかのように
必死の形相で食べている。
聞くと

「全部食べないと怒られるし
　早く食べないと叩かれる。
　ひとりおいていかれたら、食べれない
　だからあるときにたくさん食べる。」

空飛君は何日もひとりでおいて行かれたことがあった。
手が届かないから食べ物は無く、冷蔵庫には何もない。
だからお風呂場に行って、お水を飲んだと言う。

空飛君は大樹先生の指示どおり個室に寝かせて、ひとり専属でナースをつけた。
おにぎりやパン、果物、飲み物、
欲しがるものを与えて、無くならないからゆっくり食べていいことを教えた。

「いただきます」
「ごちそうさま。」

さえも知らなくて…眠るときは、押入れの狭いところに押し込められていたようで小さくなって眠った。

ナースも医師もやるせない。
たまらない事実に心が痛む。

その空飛君が暴れだして、手がつけられないという。
下手に押さえ込まないよう伝えて病室へ急いだ。

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