研究員はポアロにいる

桜色 ページ41

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Aが買い物の帰りにふらりと寄った神社では、どうやらお花見シーズンのようで、たくさんの人で賑わっていた。




｢綺麗…｣




満開の桜の木から、ヒラヒラと舞う桃色の花弁はとても美しかった。



Aは人混みに揉まれながら、一回り大きな桜の大木を目指した。


しかし、まったりとした雰囲気は、Aの背後の気配で全て消し去られた。




｢…｣




人の多さでカモフラージュしながら、後ろからAにピッタリとくっついて歩く人が1人。


確か、この辺りは“スリの黒兵衛”の被害が特に多い地域だったはず。


その事を思い出したAは、右手のバッグを肩に強く掛け直し、左手にスマホを握った。




｢あ、すみません…｣




黒兵衛らしき女性がAにぶつかった。


その途端、彼女は慣れた手つきでAのバッグからちらりと覗く財布に手を伸ばしたが、Aがバッグをまた肩に掛け直したため、その手を引っ込めた。


そして、黒兵衛が立ち去る時、Aはカメラアプリを立ち上げていたスマホをタップした。




＊＊＊





｢あの、すみません｣




その後、Aは先程のことを一応警察に言っておこうと、たまたま見かけた警官に声をかけた。




｢あ、今少し立て込んでて！ 緊急では無いなら後にしてもらえますか？｣




声をかけた警官はそう言って、そそくさと無線を片手に去って行った。


彼が向かった方を見ると、何やら騒ぎがあったようで、野次馬がかなり集まっていた。


Aは、人混みをかき分け、野次馬の先頭へ辿り着いた。



“それ”を見たAは衝撃を受けた。

なんと、先程彼女が被害を受けそうになった、スリの犯人の女性が壁に寄りかかり、血を流して死んでいたのだ。









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