研究員はポアロにいる

特急 ページ14

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《＿＿＿来葉峠にて、自動車が転落し＿＿＿》




｢…｣




とある家電量販店。
ポアロに行く途中のAは、展示用のテレビの前で立ち往生していた。


通りかかった人々は｢あら。こわいわねぇ…｣などと感想を零すのだった。


そろそろポアロに向かおう、と足を踏み出せば、背後から彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。




｢Aさーん！｣




ショートカットの黒髪に、口から覗く八重歯。
そして印象的な目の下のクマ。




｢真純ちゃん！｣




高校生探偵の世良真純が、こちらに手を振っている。
彼女とはとある事件で知り合ったのだ。


笑顔で手を振り返せば、世良は横断歩道を走ってこちらまで来てくれた。




｢ちょうど良かったよ！今からAさんに会いに、ポアロに行こうとしてたからさ！｣


｢私に何か用事？｣


｢ああ！これを渡そうと思ってさ！｣




そう言って世良が差し出したのは、｢ミステリートレイン｣と書かれたパスリングだった。




｢ミステリー小説が好きなAさんにはピッタリだと思ってさ！ペアチケットが取れたから、一緒に行こう！｣


｢…でも、これ謎解きイベントがあるんだよね？私探偵じゃないからなぁ…｣




頭が切れる世良とは違い、ただの研究員である自分が参加することに躊躇していると、彼女は驚いた顔をした。




｢何言ってるんだ！Aさんは探偵並みの思考力の持ち主だと思うよ！｣


｢そ、そうかなぁ…｣


｢ボクがリードするよ！｣




その言葉に後押しされ、Aは差し出されたパスリングを受け取った。









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