玖拾伍 ページ20
片腕にしては粘った方だ。
西の空へ半分以上沈みかけている月を見ながら、Aはそう思った。
カランカランと音を立てて、Aの右手から光を失った日輪刀が落ちた。
触手に腹を貫通されたAを、鬼舞辻は冷たい目で見上げている。
触手が引き抜かれると、Aは重力に従って地に落ちた。
「手加減はしていたが、随分楽しめたぞ」
血を吐くAの隣にしゃがんだ鬼舞辻がそう言った。
そして、ずっと見ていた鬼の頚根っこを掴み寄せる。
「最期の情けをかけてやろう。コイツが失った記憶を戻せ」
「は、はいぃ!」
鬼が震える手をAの頭に翳す。
その途端、Aの頭に全ての記憶が流れ込んできた。
時透に自分の過去を打ち明けた事、想いを伝えられた事、二人で過ごした事全て。
それで用済みだと考えたのか、鬼舞辻はその鬼の頭を握り潰した。
「どうせもうすぐお前は死ぬ。ここで孤独死するんだな」
鬼舞辻はそう言い残すと、一瞬で姿を消した。
その後すぐに眩しい陽光が辺りを照らす。
「...A...?」
遠くなっていく意識の中、Aの耳に愛しい彼の声が届いた。
Aは彼の方を見ると、ゆっくりと笑みを浮かべる。
『...久しぶり、無一郎』
Aが見たのは、大粒の涙を流した時透だった。
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桜餅(プロフ) - 織葉さん» ありがとうこざいます!作るの遅くなって申し訳ありません... (2020年2月16日 11時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
織葉(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください。応援しています!! (2020年2月15日 22時) (レス) id: f370ea2008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2020年2月15日 22時