背中 ページ14
上手な言い訳が思いつかない。だって剣持先輩に会うなんて想定してなかったし、暑いし、お腹空いたし、右手は掴まれたままでドキドキするし。……先輩かっこいいし。……手、冷たくて気持ちいい。
「雲桜?………大丈夫?」
「…え?はい。すみません頭回ってなくて……」
どこでもいいから涼しい場所に移動した方が良さそうだ。汗のせいでシャツがベタベタ張り付いて気持ち悪い。あ、私汗臭くないかな。……ちょっと離れたい、かも。
「………あの、?」
離してほしくて腕を引いたけれど、先輩の手はがっちり私の腕を掴んだままだった。え、なんで?
「私そろそろ____!?」
剣持先輩の手は私の頬に触れて、それからおでこに移動した。びっくりしたし、何より汗をかいているから咄嗟に払い除けようとした私の手を器用に掴んで、東屋へ引っ張った。
「ここ座って。……気分悪いとかは?」
「………?、別に…」
「今親御さんとか家にいる?」
いたらサボってないですよ、と言おうと思ったのに上手く口が動かなかった。それでも何か返そうとして口を開くと___おぇ、聞き苦しい嗚咽が漏れて咄嗟に口を塞いだ。私は好きな人の前でなんて見苦しい姿を晒してるんだ。早く治まって、お願い。こんなの見られたくない。
生理的な涙が目尻に溜まる。脳が沸騰しそう。どうしよう、助けて。助けて、カナエ。
「__飲んで」
顎を掬われて冷たい液体が喉に流れ込んだ。ごきゅりと喉が鳴る。すっかり飲み干してしまうほど夢中になって、息を吐いた頃には少し脳が冷めていた。
「日除けになるか分かんないけどこれ被って。無いよりマシだから」
「え、!?でもわた、し、汗かいて」
「いいから。……大丈夫だから」
剣持先輩の手が私の頭を滑った。
「後輩は大人しく先輩に頼ってろ」
きゅう、心臓が音を立てて縮んだ。体操服を私の頭に被られせた剣持先輩は私の目の前で背中を向けてしゃがんだ。
「乗って。とりあえず僕の家つれて帰るから。……ほら早く。迷惑とか考えんなよ。先輩命令だから」
「………お邪魔します」
ふらつく身体で先輩の背中に被さった。私の手がしっかり首に回ったのを確認して、先輩は立ち上がる。……先輩の背中大っきい。
「___大丈夫だよ、A」
その声はとても優しくて、私は思わず先輩に回した手を強めてしまった。
先輩、先輩。……刀也先輩。大好き。
「………普段からそう素直に呼べよ」
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ぴた(プロフ) - ひなさん» 大好きだなんてありがとうございます!😭これからも読んで頂ければ嬉しいです! (4月23日 16時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - YURIKAさん» コメントありがとうございます!😭この曲は私的に凄く大好きな曲で、絶対書きたいと思って温めてたやつです!笑 (4月23日 15時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - みかんみかんさん» ありがとうございます!!最新話は絶対こうしたいと思って執筆したのでそう言って貰えてとても嬉しいです! (4月23日 15時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 選曲良すぎて飛びました。あり、ありがとうございます...😭😭大好きです..😢😢 (4月23日 6時) (レス) @page49 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
YURIKA(プロフ) - 初コメ失礼します! 最新話で出てきた曲名がどんな曲だったかイマイチピンと来なかったので調べて聞いてみたんですが、今までの話や二人の関係にピッタリすぎてぶっ飛びました…神選曲すぎます!! (4月22日 23時) (レス) @page49 id: 2ef72ec18a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴた | 作成日時:2023年2月1日 19時