素直だと気持ち悪い ページ44
.
確かにこのままじゃ追い付かれるだろう。
見た感じ、凄く弱っているように見える。
今なら皆の力を全部ぶつければ…イケるっ!
私は一人足を止め、怪物に向かってトランプ銃を構える。
『こうなったら、やるっきゃないだろ!』
「大分弱ってる!今なら…!」
「あーっもぉ!やったろーじゃん!チビんじゃねーぞ、真面目クン!」
「ハッ、お前こそ!」
「オレ様の真の力、見せてやるんだゾ!」
先を走っていた皆が私の横に並び、マジカルペンを構えて体勢を整える。
思わず口元が緩みながら、トランプ銃を構え直す。
この怪物を倒すにはグリム、エース、デュースの三人の力が頼りだ。
さっきみたいに行けば、絶対大丈夫!!
そうして怪物との第二ラウンドが開始された。
まず先程と同じ様にグリムの炎をエースの風魔法で火力を上げ、そこにデュースの大釜を打ち込む。
私は足元をよく狙ってトランプ銃を打ちながら、手頃な木の枝を軸にして蹴りを喰らわし、ユウ君は丁度よさそうな石などを拾って投げまくる。
それを何度も繰り返し行った結果、怪物は大きな断末魔を挙げて静かになり、動かなくなった。
緊張で呼吸が乱れながら、怪物の様子を観察する。
どうやら本当に動かない様だ。
「はぁ…はぁ…」
「やっ…た…?」
「か、勝った…。オレ様達が勝ったんだゾ!」
「よっしゃああ!」
「「やったあ!」」
「勝利のハイタッチなんだゾ〜!」
イェーッ!と三人は仲良くハイタッチをした。
ここに来た時とは大違いだ。
私とユウ君でハイタッチしながら、その光景を見て耐え切れずに笑った。
「皆すっかり仲良しだね」
『あれだな、雨降って地固まるってやつ』
「「「あっ…」」」
そう言えば、何故か三人は目を見開いてブンブンと首を横に振る。
皆素直じゃない。
「ち、違う!別にこれは…そう言うんじゃない!」
「そ、そーそー!変な事言わないでくんない?」
「お、オレ様が大天才だから勝てたんだゾ!力を合わせたから勝てた訳じゃねーんだゾ!」
「…って、言い訳すんのもダサいか。悔しいけどAとユウの作戦勝ち、かな」
「…ああ。お前達が落ち着いて指示を出してくれたからこうして魔法石を手に入れられた」
「……」
『…なんか』
「「?」」
『二人が素直だと気持ち悪いな』
「「なっ!?失礼な!!」」
でも…本当皆無事でよかった。
.
362人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サヒア | 作成日時:2020年5月7日 2時