オンボロ寮 ページ12
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と言う学園長に背を押され、私達はその少し古い建物へと足を運んだ。
そう、学園長は確かに言ったのだ。
「これは……趣があり過ぎる」
『どー見てもオンボロじゃんか!!』
「ま、まあまあ。早く中へどうぞどうぞ〜」
少し小高い丘の上に聳え立つ建物。
確かに建物と言えるが、少し古いとは言い難いものだった。
外装を見ただけでもわかる。
窓ガラスにはヒビに板、傾いた扉、何箇所か空いている屋根、生えきった雑草に謎の枯れた木。
素人でもわかる。
こ れ は や ば い
もしかしたら中は意外と綺麗なのかもしれない、なんて淡い期待をした自分が馬鹿だった。
玄関からもうヤバい。
埃がそこら中に舞っているし、床もガタガタ、天井の隅には蜘蛛の巣。
入ってすぐの所は談話室、だったところ。
飾られていたであろう絵画の額縁が傾いてたり落下したまま放置されてたり、ソファにも埃がこれでもかと積もって、暖炉なんかもう見たくもない。
元寮なだけあって無駄に広い。
階段も数カ所穴が空いてあるし、他の部屋の扉も手摺りもガタガタ、埃や蜘蛛の巣なんてわんさか。
こんなものを見た私とユウ君は、もう言葉を失った。
「『……』」
「ここならば雨風くらいは凌げるはず。私は調べ物に戻りますので、適当に過ごしていて下さい。あと、学園内はウロウロしないように!では!」
スタコラサッサ〜と、学園長はこのオンボロ寮から何処かへ行ってしまった。
適当に過ごすも何も…どうしろと?
え、私ら今日から帰れるまでここで寝泊りすんの?
え、マジで言ってます??
……………え???
こんなんじゃソファに座る事さえ無理じゃん…。
そんな私の心を読んだのか、ユウ君がぐっと拳を握ってこちらを見る。
「座る為にも、まず掃除をしよう」
『…ソダネ。こんな所で生活したくないもん』
そうして私とユウ君は、この少し古い……オンボロ寮の掃除を開始したのだった。
道具が全てここにあった事が幸いだったが、掃除道具もオンボロでなんとか使えそうなものだけを拝借して、掃除をした。
結構な時間が経った頃、ザーザーと言う音がして窓の外を見る。
どうやら雨が降って来たようだ。
と、思った時だった。
「ぎえー!急にひでえ雨だゾ!」
「『!!』」
突然、聞き覚えのある独特な癖を持った声が聞こえた。
まさか…と私とユウ君は顔を見合わす。
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作者名:サヒア | 作成日時:2020年5月7日 2時