1 ページ1
「The next station is Pearson Airport.」
トロント留学を初めて早1年。
耳もだいぶ英語やフランス語に慣れてきた。
トロント医大の最寄り駅から地下鉄に乗り、移動すること2駅で久しぶりに聞く"Pearson Airport"というアナウンス。
多数の人が乗り合わせ、混んでいる車内を掻き分け出やすいように移動し、開扉と同時にホームに降り立った。
今日、俺はマーティン教授から頂いた1週間の休みを使い、日本に一時帰国する。
大して中身は入っていないが、無駄に大きなキャリーケースを転がしホームから空港内の搭乗受付に並んだ。
最低限の荷物以外を預け、検査を受けて待合室の椅子に座ってスマートフォンの電源を入れる。
「今から帰る」
日本に居る仲間達にメッセージを送り、俺は唯一預けなかった小さな紙袋の中を覗いた。
トロント市内で購入したそれは、頑丈に包まれ眠っていた。
「Boarding acceptance for Flight 625 bound for Narita Airport will begin.」
しばらくして搭乗開始のアナウンスがあり、その小さな紙袋をしっかりと手に持って飛行機に乗り込んだ。
一方その頃...
白side
「おう、白石。確か明日だよな？耕作ちゃん、帰ってくるの」
「うん、藤川先生嬉しそうね」
「あったりまえだろ〜?1週間だけだけどさ、ライバルが帰ってくるんだぜ。」
日勤が終わり、帰り支度をしていた私に藤川先生が嬉しそうに話しかけてくる。
1週間ほど前、藍沢先生から来たメッセージで分かったことだ。
そのメッセージはシンプルで、
「1週間後、一時帰国する」
とだけ。
一緒に見ていた緋山先生達が、「メッセージくらい愛想良くしなさいよ」と呆れるほど。
そして明日がその、待ちに待った帰国日だということだ。
藍沢先生が帰ってくる。
何をしようかな、たくさん話したいことや聞きたいことあるんだよな。
明日、半年ぶりに藍沢先生に会えるということの実感が湧いてくると、途端に嬉しくて仕方がなくなる。
早く会いたい、いっぱいお話がしたい。一緒にお酒を飲みたい。
そして、勇気が消えないうちに告白したい。
そう思っていた。
嬉しさが込み上げ、医局で舞いそうになってしまったが慌てて抑える。
「じゃあ、私、帰るね。お先に」
「おう、気をつけて帰れよ」
勝手ににやける口元を必死に押さえ込み、私は自宅に帰り、明日に向けての支度を整え早めに眠りについた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Noa(プロフ) - あかりんごさん» はじめまして。pixivでしたら同一人物です。見つけて下さりありがとうございました。 (2020年8月16日 16時) (
レス) id: e4c16b987b (このIDを非表示/違反報告)
あかりんご - 私この小説見たことあります！！！確かpixivだったような…違ってたらごめんなさい (2020年8月16日 16時) (レス) id: 89de9314a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sakuraba_akebi | 作成日時：2020年6月30日 17時
