63 ページ14
.
流れる景色と感じる風。バイクというものに初めて乗った。それも人の後ろに。
そんな初めての状況と、自覚あるくらい酔っていたせい。そして優吾くんから感じる謎の安心感のせい、だと思う。
ずっと、悩んでいた大我とのこと、そしてその原因についてポロッと口から出てしまった。話しながら酔ってるせいもあってじわじわと涙が浮かんだ。
酔って迷惑をかけてる上にバイクで送ってもらうなんていう迷惑も重ねてる。その上ちょっと重めな話までして泣いて迷惑をかけるなんて最悪すぎる…。と堪えるが堪えたせいで体に力が入っちゃって…優吾くんのお腹にまわしてる腕、きつくなってないかな、と少し心配になった。
全部を話し終え「ありがとう」の意味を込めてまわしている手でお腹をポンポンと叩いてみた。これで少しは雰囲気軽くなんないかな…。
高「話くらいは、聞けるよ。喉、弱いのも気を遣ってたのも知ってるし」
そう言われて思い出す。そうだよ、優吾くんには話してたじゃん。…というか、この話結構してるような。なのに今更話しちゃったのちょっと恥ずかしいかも。
「…そーだね。話してたね」
高「…俺、メンタルサポーターなの。」
「…えぇ？なにそれ」
唐突に出てきた「メンタルサポーター」という単語に頭の中が一気に疑問符でいっぱいになる。メンタルのサポーター…っていうことだよね？似合うな、優吾くん。すごく上手そう。
高「まぁ、ジェシーとかと言ってるだけ、だけどね。まぁ、人の相談事とかは、よく聞く方なの」
「優吾くん、話しやすいもんね。相談したくなっちゃうね」
相談事を聞く方ってやっぱりすごく納得がいく。さっきの私だって、思わず話しちゃった感じだし。そういう雰囲気、ある。
高「そんな俺から一つ言うとしたらさ、」
「うん」
高「そういうときね、泣いていいんだよ。いろんなことが嫌になってお酒に頼っちゃうくらいの時は、我慢しないで泣いていいの。泣いてからこれからの事、考えてもいいんだよ」
柔らかく、ゆったりとした声。高過ぎず低すぎず、心地よいそれがスッと私の中に入ってくる。
自分が好きなバンドの、背中を押すような大好きな曲を聞いている時のような感じ。自然と視界が滲んで「あったかい」と思うくらいの温度を感じる涙がスッと流れる。鼻の奥がツンとするとか、目の奥が熱くなるとかいう前触れが一切なく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天羽
| 作成日時：2022年11月30日 3時
