78 ページ29
.
スルスルと髪を梳くように指を通しながら小さい声でジェシーが「ねぇ」なんて言う。
ジ「写真見えちゃった。…これが原因？」
「…あぁ、開いてたもんね」
明るく写真を写したままの携帯。もう見たくない。ホームに戻してから画面を切る。
ジ「いい写真っぽかったけど？」
「写真としてはいいかもだけどさ…まぁ、しんどくなる理由あるのよ」
ジ「それは教えてくれる？」
スルスルと通り続ける指。もうその行為に安心してしまうようになった私がいる。二人のことは言わない。言ったらもっともっといいたくなってしまうだろうから。
「観覧車、」
ジ「観覧車？あれ？」
髪を梳いてた指が観覧車を指さす。その指の先を眺めながら頷く。
「好きなんだ。昔から。…乗りたかった、慎太郎と」
「昔ね、慎太郎と乗ろうとして、失敗したの。…リベンジしたくなったけど、出来ないからさ。…特別乗りたいわけじゃないし、出来ないならいいんだけどね。…なんかちょっとしんどくなった」
言いながら鼻の奥がツンとしてしまった。詰まる言葉を無理やり出す。視界が滲んでくることがばれたくなくてうつむく。
ジ「…俺とじゃダメ？」
「…ジェシーと？観覧車？」
ジ「慎太郎とじゃなきゃ意味ない？好きなら乗ってさ、新しい思い出作っちゃうの。どう？」
思ってもみなかった言葉に顔を上げる。ニッコニコの笑顔ですごく前向きな提案。…暗くなってしまっていた自分が馬鹿らしくなる。
「…いい。ジェシーとでいい」
ジ「なら行こ！」
私の手を取って走る。さっきまで慎太郎に引っ張られていた腕。今はジェシーに引っ張られている不思議な感覚。お互いグループから抜け出してる状態で観覧車に乗り込む。なんというか、秘密感が少し面白かった。
「きれいだね」
もともと好きだった観覧車。この高いところから見るいつもと違う景色が好きなんだ。
ジ「どう？乗ってよかったでしょ？」
「うん。…ありがと」
ジ「それこっちのセリフかもなー」
「なんで」
さっきまで目に涙が滲んでいたはずがもう笑えている。ジェシーは不思議なパワーでも持ってるんじゃないかってくらい。
「前向きになりたい」
ジ「十分じゃない？」
「何回も見てると思うけど私すぐ泣くじゃん？」
ジ「そん時は俺が助けるよー？」
「毎回迷惑かけられないって」
変にヒーローみたいなポーズで言うからそれにも笑えてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまは(プロフ) - よしのさん» 最高だなんて…ありがとうございます！もう少しで完結の予定ですが、それまでお付き合いいただけたら嬉しいです！ (2021年12月20日 0時) (
レス) id: aa4a13b0c9 (このIDを非表示/違反報告)
よしの(プロフ) - シンプルに最高な作品に出会ってしまいました！！！ありがとうございます＾＾お身体ご自愛ください！ (2021年12月17日 11時) (レス) @page45 id: 2f2270aaf2 (このIDを非表示/違反報告)
あまは(プロフ) - hohoさん» 私もしばらく前に学生生活を終了した身なので記憶を引っ張りながらですが、そう思っていただけてすごくうれしいです！こんな作品ですが癒しになっているなら幸いです(笑)育児がんばってください！ (2021年12月16日 1時) (レス) id: aa4a13b0c9 (このIDを非表示/違反報告)
hoho(プロフ) - きゅんきゅんを何処かに置いてきた私の癒しです笑。こんな高校生活送りたかったー！って思いながら育児頑張ります( ^ω^ ) (2021年12月15日 18時) (レス) id: 80be9b38a5 (このIDを非表示/違反報告)
天羽(プロフ) - ありありさん» 凄く嬉しいコメントありがとうございます！！すごく励みになります！また書きたいお話はあるのでしばらく後になってしまうかと思いますがジェシー落ちは書く予定ですので気長に待ってもらえたら嬉しいです！！ (2021年12月15日 14時) (レス) id: 13830d60cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天羽
| 作成日時：2021年11月7日 2時
