その笑顔に救われた【桃】

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『…』

「そこ、危ないから降りといで！」





マスクを下げて、こちらまで駆け寄ってきて

手を広げて待っているあの人。

…そこに飛び込めと？





「ほら！支えるから！」

『…やだ』

「はぁ！？」





じゃあとりあえずこっち向いて！と言われ

渋々体をそちらに向ける。





「手貸して！」

『なんで？』

「いいから！」





大好きな人に手を掴まれた。

もう悔いないな。

そう思っていたら手を引かれて

身体へダイブしてしまった。

その人は私を抱きしめたけど

支えきれず後ろによろけて

私が押し倒す形になってしまった。

その拍子に被っていたキャップが外れる。

最近染めたばかりの綺麗な暗髪が見えた。





「…捕まえた」





顔を見ると、私をそのまま抱きしめながら

にひひ。と笑う。

あぁ、狡い。







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