No.62 ページ13
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「時間だし、そろそろ帰る」
『そっか、今日はありがと。勉強はかどったよ』
「俺も、勉強会して良かったと思う」
Aは賢いんだな、と玄関先で言われたその言葉に私の顔は一気に熱くなっていく。
そんな私に出来るのは、ただそれを否定して轟くんも賢いねと褒めるだけ。
「じゃあまた明日、公園でな」
『うん、明日。……ねぇ、轟くん』
「お。なんだ？」
ドアノブに手をかける後ろ姿は、男の子って感じのたくましさと安心感がある。でもその分、離れてしまうと寂しくて行ってほしくないなんて考えてしまう。
だから私は、咄嗟に轟くんの袖を引っ張って呼び止めた。でもその先を考えていなかった為に、轟くんは首を傾げている。
『えっと、その……な、夏休み！夏祭り、行かない？』
「あぁ、いいぞ。そういや毎年花火上がってたな。それ見に行くか」
『え、いいの？』
「どっかに行こうって話してただろ。今更断る理由がねぇ」
突然の私の提案に決まってしまった約束。
詳細はまた決めようと言ってくれて、一気に寂しさなんてどこかに飛んでいってしまった。
轟くんとの夏祭り。何を着ていこう、髪型どうしよう、いつ集合しよう？何か良いことが起きるかな…と頭の中はワクワクとドキドキで埋め尽くされて幸福感で満ち溢れている。
「楽しそうだな。じゃあまた」
『うんっ、またあし……！？』
ぽん、と軽く撫でられた私の頭。フッと笑みを見せた轟くんはそのままドアの向こう側へと出てしまう。
『不意打ちはダメだよー…』
へなへなと座り込んで放心状態になる。けれど数分後にまた私は思い出したのだ。
『そういえば、何も視えなかった…』
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年7月12日 14時
