No.28 ページ28
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テレビの中に映る関係者らしき人物の心の声を聞いた。普段なら触れない限り、声しか聞こえてこないのだが、その人物は映像として記憶していた。
それほど衝撃だったのだろう。
実際に、それを見た私も恐怖で頭の中が真っ白だ。
それでも行かないと行けない。轟くんが無事でありますようにと願いながら。
『ごめんすら言えてないのにっ…、一生のお別れとかあり得ないから…！』
息を切らしながらも、恐らくここだろうと辿り着いたのは保須総合病院。
受付の人に尋ねれば、やはり彼はここに入院しているようだった。
ふぅ、と大きく深呼吸をし、ドアをノックしようとすれば大きな笑い声が聞こえてきた。
「ははっ！ハンドクラッシャーってほんと…あれ？君は」
『……。』
「確か、この前A組に来ていた女子だな」
「感宮…」
私はどうやら最悪の状況を思い込みすぎたらしい。
普通に談笑している轟くんと、何故か一緒にいる緑谷、あとメガネ男子の姿に一気に力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「おい、感宮。大丈夫か」
『……た』
「え？」
『良かった…！無事、でっ…。とど、ろきくん…ごめ、んなさっ…！！』
とめどもなく溢れる涙。顔をぐしゃぐしゃにしながらも轟くんが無事だったこと、ちゃんと謝れたことに酷く安心したのだ。
急に泣き始める私に、後ろの男子二人はどうしようかと慌てていたが、轟くんはどこからかタオルを持ってきて私の涙を拭き取ってくれた。
「悪かった、心配かけたな」
『轟くんのばかぁ…どこにも、行かないでよ…！』
「あぁ、どこにも行かねぇ」
そんな私たち二人に、緑谷とメガネ男子が顔を赤くしていたのはつゆ知らず。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
