No.18 ページ18
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『…で、何でまだいるの？』
「お、早かったな」
『早かったな、じゃなくて…！』
呑気にソファでくつろぐ轟くん。マグカップの中身はもちろん空だ。
「俺が出ると、鍵閉めらんねぇしお前風呂入ってるしで危ねぇだろ。だから待ってた」
『いや、大丈夫だって。誰もこんなとこ来ないよ』
ふぅ、と浅く息を吐きながら髪をタオルで拭いてキッチンに向かおうとする。だけどその時、「おい」という低い声と共に、腕を引っ張られる感覚がした。
"おかあ、さん…？"
『っ…！！』
「なっ…」
その刹那、幼い轟くんが絶望した顔で母の名を呼ぶ光景が目に視える。だが、反射的に強く彼の手を振り払った為、すぐに消えた。
『だから、触んないでってば…』
「悪ぃ…」
ぽかんとする轟くんとの間に気まずい空気が流れていく。それが居心地悪くて、何事も無かったかのようにキッチンでお湯を沸かし始めた。
『で、何か言おうとしてた？』
「いや…感宮はもっと男に警戒した方がいいと思う。俺が言えたことじゃねぇんだが」
『十分警戒してるつもりだけど』
ムッとする私に気付いていないのか、轟くんはまだ話を続けようとする。それは今まで頑張ってきたことを意味がないと言われているようで…苦しかった。
「だったら何であんな時間に外に居たんだ。あんなの男を誘ってるようなもんだろ。
それに、現に俺を家に上げて風呂まで入れて…まぁありがたいし、俺だったから良かったものの…他の奴だったら」
『何も知らないくせに勝手に説教しないで』
また、空気が冷たくなっていくのが分かった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
