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眠たくなる先生の子守唄のような声、カリカリと走らせるシャーペンの音、遠くから聞こえる轟音。
最後の轟音は、普通の学校じゃ有り得ないけれど、ここ雄英高校にはヒーロー科というものがあるから日常茶飯事である。
(あぁーねみぃー)
(ここの問題難しいなぁ)
(今日の晩御飯、なんだろー)
一体何をしているんだ、ヒーロー科は。
…と、思うようなところとは程遠いこの普通科では今日も今日とて熱心に授業を受けるフリをして、皆頭の中は別の事を考えている。
そしてその中の一人である私、感宮Aは自分の個性の制御が緩んでいることに気付き、急いで授業に耳を傾ける。
私の個性、テレパシー。
集中すると他人の心の声が聞こえる。また、人に触れるとその人の過去が視えてしまう。
この個性のせいで、まだ15年という短い人生だけど散々な目に合った。でも、そんな私にも唯一の癒しがあったのだ。
『猫ちゃん…何してるかな』
白と灰色の毛並みを持つノラ猫。私の唯一の友達。…と言っても、友達と思っているのは私だけかもしれないけれど、それでも仲良くさせてもらっているとは思う。
動物だけ、心の声が聞こえないのだ。だから何を思っているのかなと想像したり、いろいろな話をしたりすることが嬉しくて、楽なの。
「猫、好きなのか?」
だけど最近、猫のことを考えると一緒に思い出してしまう人物がいる。紅白髪にオッドアイ、そして思わず見てしまう左目周りの火傷の痕。
そんな彼、轟焦凍との出会いが私の運命を大きく変えるなんて…この時の私は夢にも思わなかった。
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作者名:空涼 | 作成日時:2019年5月10日 19時