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指示書に記されたものを揃え、点滴をフックにかけていると、ジミンが目を覚した。
「あれ、」
ジミンは私を見るなり不思議そうな顔をした。
『寝てる間に診察終わったから、先生はもう帰ったよ。用意できたら点滴打つからね。』
そう言って、ジミンの方を見ると熱のせいで少し潤んだ目でこちらを見つめてきた。その表情に胸にギュッとした感覚が襲った。
「絶対?」
『なに、点滴嫌なの?でも、それじゃないと楽にならないよ?』
すると、私のカーディガンの裾を引っ張ってきて、
「Aがいてくれればいい。」
『っ、』
何を言っているんだ。
その潤んだ目と、少し頬の火照った顔で見つめられて、しかもそんなことを言われたら、いくら何でも調子が狂う。
それに、何故か今日はヌナと呼ばず、Aと、呼び捨てで呼んでくる。
『何言ってるの。ただでさえ免疫力下がってるのに、このまま放っておいたら更にひどくなっちゃうだけなんだよ?退院も遅れちゃうかもよ?』
そこまでのことはないだろうけど、このままだったら頑なに点滴を拒みそうだ。今まで点滴を拒んできたことはなかった。鎮痛剤も点滴でずっとやっていたし、これも熱のせいなのか?
「それは嫌だ。」
カーディガンを引っ張る力が更に強くなった。
『だから点滴しよ?1時間ぐらいの辛抱だから。』
そう言ってもただ見つめてくるだけで、何も答えてくれない。
そこだけは譲れないわけね。ここはもう、私が折れるしかないようだ。
『あ〜、わかったよ。ちゃんと点滴してくれたら、今日は1日一緒にいてあげるから。』
そう言うと、ジミンは喜びでいっぱいの顔で笑って頷いた。
『わかったなら、手離して、仕事できないから。』
今だにカーディガンを引っ張る手を掴んで、無理矢理にでも離そうとしたけれど、案外力が強くて離れない。
「これぐらいいいじゃん。」
『そんな元気あるなら、今日帰っちゃうよ。』
そう言って軽く脅すと、ジミンは渋々手を離してくれた。
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作者名:ミルキー | 作成日時:2018年5月2日 8時