SNOW MAGIC（緑） (ページ15)

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樹が迎えに来ることを阿部くんは知っていたから

「店長…………」

「樹くん、本当に遅いね。帰った方がいいんじゃない？
ここに来たら伝えとくよ？」

「ありがとうございます」

お金を置いて喫茶店を出る

また、やってはいけない失態を私は犯してしまった

あの感覚に私はまた襲われる

「ありがとうございました」

いつもは船長さんが「ありがとうございます」って言うのを聞くだけ

今日は、ほんの少しだけ勇気を振り絞ってお礼を言ってみた

驚いた顔をした船長さん

でも、直ぐに笑顔になって言い返してくれる

「まって………また…………？」

見たことの無い景色

枯れていた木は、綺麗なピンク色のつぼみをつけ始めてた

綺麗な満月に照らされている、ピンク色のつぼみをつけ始めた木

「もうやだ……」

かなりのショック

1回ならまだしも、この失態を犯したのは2回目

笑えるどころじゃない
私は何をしているのだろう

「どうしよ……」

前は運良く阿部くんが私に気付いて1晩泊めてくれた

でも、今日はそうとは行かない

今日こそ本当に野宿をしなければならないのか

時間は夜の10時半
朝と夜はまだ冷え込むこの季節

私の体はもちはしないだろう

とにかく今日はこの島を探検することにした

そうすれば、どこかで寝てしまうって言うことは避けれるだろう

「なんか、楽しい」

小さい頃以来、島をこうやって探検するのは

あの時は樹が隣にいてくれた

話を盛り上げてくれて、
笑顔にしてくれて、
疲れを忘れさせてくれて、

時間なんか直ぐに忘れることができた

「なにか、樹にしちゃったかな……？」

小さな溜息は、夜空へと消えていく

この1晩、どうやって乗り切ろうか考えないといけないはずなのに、直ぐに樹のことで頭がいっぱい、いっぱいになる

灯りが付いてるコンビニ
ミルクティーを買うために中へ入る

「いらっしゃいませ」

深夜にも関わらず、安心感のある定員さんの声

飲み物コーナーへ移動してミルクティーを取り出す

「ありがとうございました！」

コンビニを出て、買ったばかりのミルクティーを開けて一口飲み込む

温かさとミルクの甘みが口いっぱいに広がる

深夜1時
私が住んでいる島とは違って街灯が立ち並ぶ

それだけの事なのに何故か勇気が湧く

「眠い……」

温かいミルクティーを買ったのが失敗だったのか、直ぐに眠気は襲ってくる