SNOW MAGIC（緑） (ページ13)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:28,047 hit

･ページ13

綺麗な鈴の音が鳴ってドアが開く

店長がこっちを向いて驚いた表情をする

「癒夢ちゃんも…………？」

「……ん？」

「いや、なんでもないよ」

そう言っていつもの場所へ案内される…………と思っていた

でも、今日は阿部くんが居る

案内される場所は個室だ
店長のことだから私が言うまで気づかないと思っていた

「ミルクティー！」

「そう言われると思ってもう作っておいたよ」

「ありがとうございます」

机の上に置かれる暖かいミルクティー

薄く湯気が立ちのぼる

そのカップを両手で包んで一口だけ飲む

「ぁっつ、…………阿部くんは、な…何、頼むんですか？」

「んじゃぁ、アイスコーヒーで」

「は～い、ちょっとまっててね～」

店長が出ていくと静かになる個室

私も、阿部くんも話さない

意図的に話していないのか、
それとも恣意的(しいてき)なのか

「はい、お待たせ」

笑顔で持ってきたのは、綺麗な黒色をしたコーヒー

蒸気でもうコップの周りが濡れている

「ありがとうございます」

阿部くんがお礼を言ったと同時に出ていく店長

受け取ったコーヒーをそのまま口にして飲む

その一連の流れが綺麗だった
見惚れてしまうほど

「ん？笑どうかした？笑」

「い……いや」

まだ微かに微笑んでいる様子の阿部くん

コースターにコップを置くと綺麗な音が鳴る

「大学…………どう？……慣れた？」

どこかのお父さんみたいな話し方

でも、その感じが今の私には心地よかった

暖房が効いているからなのか、
阿部くんと一緒に居るからなのか、
体温はどんどん上がっていく

「慣れては、ないで、す」

「同じ大学だったらよかったね」

そんな偶然、私も望んでた

でも、樹の話によると阿部くんが通っている大学は上智大学

今私が通っている大学との偏差値がまず違う

何年間もの努力をして私はこの大学を選んだのだ

「そ、うだね」

「俺、春ちゃんと同じ高校行っとけばよかったかも笑」

「え…………？」

「だって、春ちゃんと話すの楽しいもん笑」

阿部くんの表情から嘘ではないことが伝わる

笑顔で話を聞いてくれて、

笑顔で話をしてくれる

「あ、ありがとう…………？」

「疑問形じゃん笑」

阿部くんと話すのはやっぱり落ち着く

「ねぇ……俺がもし……

もし、春ちゃんのことが好きって言ったら、どう、思う？」