第53話 ページ8
簓「…すまんな
それやったらもう叶わん願いかもしれへん」
ナオ「…!!」
簓「俺の妹、白膠木A、言う名前なんやけど、2週間くらい前から昏睡状態になってしもたん
ナオちゃんのばあちゃんとは理由は違うんやろけどな」
嬢ちゃんの言い分に少しの罪悪感を抱きつつ、正直に俺は嬢ちゃんに返す
暗い思いをさせたいんと違くて、真剣な話をしてくれてる嬢ちゃんにこっちの誠意を示すためや
けどナオちゃんは言えば大きく目を見開いて、その目に負の感情を伴う顔で俺を見つめる
ナオ「…おばあちゃんの物語を、幸福のエンディングに変えたかったのに…」
簓「…」
ナオ「おばあちゃんはずっと苦しんでた
自分が幸せに生きる事になれたのは、その人が自分の代わりに不幸を被ったからだって、罪悪感を抱いてずっと生きていた
そのおばあちゃんが救われないままおばあちゃんは死んで、私がその託された願いを叶える事で皆救われると思っていたのに…」
悔しそうにナオちゃんは目を伏せて、タルトに刺したフォークを握る手を震えさせる
簓「…ナオちゃん、そない事気負う必要なんてあらへんよ
ナオちゃんのおばあちゃんやって、ナオちゃんにそない思いさせたい思てそんな話したんとちゃうねんやろ?
きっと自分の孫に、面白い話聞かせたって、それで笑てもらいたくて話したに決まってるんや」
ナオ「…」
簓「…ほな、笑て」
俺はそうやって笑いかける
こない俺より小さい子がこんなに真面目に自分の信念貫いて踠きながら戦ってる言うのに、それに手を伸ばさんなんて俺の中のポリシーが歪むようなそない気がして
ナオ「…ッ…優しくしてくれなくて良い
私は何も守れなかった
私が早くおばあちゃんの言葉を理解できて、おばあちゃんの願いがどんなものか分かるのが早かったら…おばあちゃんの話は自分が小さい時から聞いていたのに、それがこの年齢にならないと意味も分からないなんて…」
簓「そない仕方あらへん事や
俺が嬢ちゃんくらいの年齢の時にそない話聞いても同じ事はきっとできへん
むしろ立派な事や思うで?ナオちゃんはまだ小さいのにおばあちゃんの言葉が深いものやってよう気付けたな」
俺はナオちゃんの頭を撫でたって、自分を落ち着けてナオちゃんと話をする事に決めていた
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年7月31日 13時