第93話 ページ48
−−side H.M−−
しばらく乱数side
乱「…ッ…ゲホッ…」
「ある日の僕」のお話だ
あの日の僕は、1人の人間を地獄に突き落とした
そいつが死に対して抵抗がないから、殺してやるよりも地獄に突き落としてしまう方が僕だって気分的に良いに決まっているんだって、そういう自分の信念に付き従うようにして
乱「…ッ…ねぇ…ッ…今の気持ちはどう…ッ…?」
『…1人で行くんねやったらそらちょいと不安やし寂寥感は抱くわな
だけど、最後まで飴村さんがウチの近くで歌っているんねやったら、子守唄みたいにぐっすり眠れる気がしてくるわ
それも真正ヒプノシスマイクの効能なん?』
あの日僕が死なせてみたいと願った誰かは、結局は最後まで「自分」を見失わずに眠るその瞬間まで自分の命を謳歌し続けていた
だけど中身の空っぽな人間の芯なんて言われても、中身がないなら何も効かなくて当たり前
守りたいものなんて所詮は「自分の中の信念」以外に何もなかったんでしょ?
全部自分の守りたいって思っていたものが、嘘と虚構に塗れた自分の幻想だって初めから分かっていたから抵抗する術も持てないでいたってだけなんでしょ?
だって本当に自分の信念貫いて通すなら、たとえ世界に歯向かう事になっても自分で剣(ぶき)を構えて戦うのがこの世界の「正しさ」だって言えるんだから
乱「…お前は生きるのに相応しくない人間だったよ
だけど死ぬのにもそんなに相応しいって思えない
だからきっと「世界」とお前が合わないっていう、それだけの事だよ」
僕達は互いを殺して自分達の正義を正当化していかないと生き延びれない
たとえそれが誰かの幸せを踏み躙る事になっても、どこかの誰かの犠牲を自分で生じさせる事になっても
その事にいちいち無駄に情を動かされているようじゃ僕達はもう自分を貫けない程に歪んでいっているんだ
乱「…僕だって、疲れた
お前みたいなのに目をつけなくちゃいけない理由が分からない」
『…なら、手握っててや
ウチも、自分1人は寂しい』
あの日の僕はそうやって「自分が地獄に堕とした人間」の手を握って自分の生涯を終えた
たとえ今のその「死」が僕の望んでいない結果であっても、「次」がきっとあるなら僕達の思いが本音で通じ合える世の中に変わる事を夢見て−−−−
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年7月31日 13時