第79話 ページ34
『…別に誤解はしてへんけど
ほんならその慈悲にかけて、ウチは差し出せるもん差し出したらなあかんのとちゃうのん?
何を求めてるんや?ウチにできる事なら何でもするで?』
フロイド「何でも?」
『眼球が欲しいなら抉り取らせたる
髪が欲しいんなら切らせたる
煮るなり焼くなり好きにしいや』
そう言ってウチが笑えば、眼鏡の兄ちゃんは微妙な表情を浮かべる
アズール「…貴女は一体何が言いたいんですか?」
『…?そのままの意味やよ
欲しいもんなら取らせたるから好きにして言うてるん
ウチが差し出せるもんなんてそない多くないやろし』
アズール「…」
けど兄ちゃんの中にも何か考えがあるのか、やがて微妙な顔したままこう言いはる
アズール「…自ら差し出すと言われて与えられるものに価値を見出す真似を僕は決してしません」
『…』
アズール「届かないと思っているから自ら手に入れた時に自分の中の欲求が満たせて快感を覚えるものでしょう?
易々と与えられるものに僕はまるで興味はありません、眼球も髪も別に入り用ではないので差し出してもらわなくて結構です」
『…ならウチにできる事はもうないで』
アズール「ですから、これらの食事は「無償提供」致します
「貴女から僕への支払いを僕が拒絶する」、これが僕から貴女に呑んでいただく「対価」でありこれ以上の交渉を受け入れるつもりもありません」
『…』
そう言われて、ウチはこの兄ちゃんから随分と嫌われているっちゅー事を見抜く
嫌われているんに、優しい事はしてくれるんやね
だってそれ、ウチがタダでもの貰っとるんに「それでええ」って言ってくれてる事になるやん
『…ほんなら、払えそうなもんが見つかったらウチが勝手に送りつけるわ
「勝手にウチが送りつけたもん」なら「今日の対価」にもならへんし、受け取ってもらえる確率も上がる言う事やろ?』
アズール「…!」
ウチはそう思て笑てそう言えば、兄ちゃんは目を見開いてウチを驚いたような顔で見つめる
アズール「…」
そしてやがてまた怪訝な顔に戻って、ウチに毒吐く
アズール「…やはり貴女は苦手です
底の知れない肚を抱えている貴女に、僕が心を開けるなんて到底予測できません」
それだけ言うと、兄ちゃんはウチを置いて1人で勝手に談話室を出て行った
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年7月31日 13時