ウチとアンタと、キミの言の葉2 (ページ17)

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第62話ページ17

盧笙side

その時の俺が抱く情は、「気味が悪い」「訳分からん」っていう直感的な情やない

「こいつの中に色々問題が隠れている」っちゅー、どちらかと言うと「悟る」方に近い感情やった

せやからきっと怒る気にもなれんかったんやって自覚している

『…ウチ今よう前が見えてへんねや

ここってウチからどのくらい離れてるん？』

目のよく開いていない顔で笑顔を浮かべたままAはその場に立ち上がる

そして異様に、さっきまでの態度と違って俺との距離感が近付いている事に俺は気付く

『…送ってもらえるとウチ助かる

送りとうないやもしれんけど、ウチの家まで送ってくれん？』

盧「…」

その事に気付いて、俺も自分の助けた相手の事を無碍にはできへんし、家まで送る事に決めていた

盧「家はあれから変わっておらんの？」

『…場所は同じや

ウチしか帰ってもおらんけどな』

盧「…は？」

簓が家にいないという事もその時初めて知った

それくらい俺は簓と距離を離していたと言っても良いのかもしれない

盧「…何言うてるんや

簓がおるやろ？」

『おらんよ

トウキョウまで自分の相棒見つけるんや言うて出かけてる』

盧「…」

Aが1人になったんは俺のせいやろかって稀に思う

けどその分俺が近くにおったから、Aが言ってた「自分の死を誰も悔やむ事はない」っちゅー言葉は打ち消せる思てた

その言葉に隠れている意味は、「自分が消えても心配される事のないくらい自分は影の薄い存在だ」という事の肯定か、あるいは「死にたい」「消えたい」言うネガティブな感情を隠すための目眩しの言葉やって俺はそう思ってるから

少なくともAの孤独感や味方がいないって勝手に感じるフィルターを、俺で消せるって俺自身はそう信じていたから

盧「…何してるんや、あのあほんだら

こない目に自分の妹が遭うてる言うんに」

『それはウチが悪い事やねん

簓の事は責めんで』

そして俺はもう一つ、Aの守っているものが何なのかをこの日引き出す事になる－－－－