ウチとアンタと、キミの言の葉

第38話 ページ41

フロイド「今日さ、午後飛行術の授業なんだよねぇ、俺のクラス」


『そうなんやな

ウチは午前中にあるで』


フロイド「お前空飛べんの？」


『飛べんのとちゃう？

ウチは魔法なんて使えへんし』


フロイド「魔法使えねーのにこの学園辛いって思わねーの？」


『逆に魔法使いなんてウチからしてみれば物珍しい思ておもろいで？』


フロイド「へー、魔法が使えない奴ばっかりの所で育ったの？」


『ちゅーかウチの世界に魔法なんてあらへん』


何やウチに興味があるんか思て話をしてきたけど、そんな訳あらへんなって思てウチは相手の興味のある事を引き出してその話をしてやる事に決める


ウチに興味があるんと違くて、ウチのおったあの日本にこの兄ちゃんは興味があるんや


フロイド「魔法がない世界でお前はどーやって敵を倒すの？」


『…何や物騒な事言いはるなぁ

拳か、それでなければ「言葉」や』


フロイド「言葉？」


『せやで

ウチの世界での一番の武器は「言葉」や

言葉で世界も変える事ができてまう』


フロイド「…どういう事？」


まぁその反応は別におかしないやろな


ウチも初めはあまりああいう世の中に変わると思てなかったもん


言葉が武器に変わって、人を不幸にする道具に下がるなんて誰が予想できたやろ


『…ウチの世界の政権はな、「言葉」を「人を傷付けて良い武器」にして人を打ち倒す真似を正義やっちゅー事にしてもうたん

武器は御法度やねんけど、言葉でなら人を傷付けても殺してもええって認めたんよ

お陰で治安は悪うなっていく一方やな』


フロイド「言葉でしか絞める事できねーのに？」


『せや

言葉が武器に変わってもうたから、治安が悪うなっていくんよ

人と人が言葉で通じ合えんようなっていく』


フロイド「…」


『そういう意味においてはウチの世界にも「言の葉の魔法」っちゅーもんはあったんかもしれへんなぁ

言葉で人を傷付けて、敵を蹴散らして、それで自分は上になって1人玉座に君臨する

世界はだんだん暗闇に紛れて、人は明るさと覇気を失くしてく

言葉で言いたい事も伝えられへんで、皆人は他人の事なんか信じられへんようになっていく

…そない世の中、魔法で成り立ってへんねやったら何で成り立っとるん』


ウチは振り返るように自分の生きた世界の事も知らんその兄ちゃんにそう言って、兄ちゃんにうっすい笑みを向けとった

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