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九十ニ. アイスが溶けたとき編 ページ17

その日はとても暑い日だった。
夏の猛暑は続き、人々の体力を蝕んでいて。
特に、


「暑すぎる…」



日の光に弱いAは参ってしまっていた。
幸いにもひの屋は室内で、百華として活動する時間帯には太陽が沈んでいる。
支障をきたさない程度で済んでいた。
それでも、汗は滴り落ちるほどで。



「あらあら、Aちゃん大丈夫?これあげるよ」


「すみません、ありがとうございます」



見かねた隣人が、Aに冷えた缶ジュースを渡してくれた。
ぐいと勢いよく飲み干せば、隣人はいい飲みっぷりねえ、と豪快に笑った。

そんな中、胸元の携帯電話が震える。
画面には、

『土方さん』

の文字。

嫌気が指し、ため息が出つつ、その電話に出た。



「もしもし。Aですけど」



「おう。ちょっと頼みたいことがある。屯所に来てくれねえか」



「ええ…また頼み事ですか」



「…お前、監視下にある身なんだぞ。俺らがその気になれば」



「あーはいはいはい分かりました!向かいますよー!」



相手の返事を待たずして、乱暴に電話を切る。
日輪に用件を話し、吉原を出た。

地上は、吉原よりも太陽は近く、太陽はぎらぎらとAを照りつけていた。
フードを被り、首巻きに顔を埋める。



「やっぱり思った通り暑いや」



陽炎はゆらゆらと揺れる。
目的地までそんなに遠くないはずなのに、果てしないように思えた。

だらだらと汗が頬を伝う。
服の中も汗が落ちていくのを感じた。


(あれ…おかしいな…)



陽炎で揺れていた地面が、更に揺れを増す。
だんだんとぐるぐると空と地面をかき混ぜたように目の前が渦巻いていて。
落ちていく汗も冷えているように感じて。


(これ、やばいやつだ…)


そう思った時には、目の前が真っ白になっていた。


.

.

.


「...あ、起きた」


目を開ければ神楽の姿があった。
Aが目を覚ましたのを確認して、銀ちゃーんと神楽は呼びかける。



「お前なあ、こんな暑い日に何やってんの」



呆れたように、銀時は襖を開けた。
身体を起き上がらせると、Aの額から冷えた布が落ちる。
枕元には氷水の入った桶と、水管が置かれていた。



「蒸し暑い中、そんな格好で歩いてたら倒れるに決まってんだろ馬鹿」



身につけていた着物は無く、神楽のであろうチャイナ服に代わっていて。
はっとした顔で、銀時を見れば



「着替えさせたのは神楽と下のババアだからな、勘違いすんな」



とAの額を指で弾いた。

.

九十三→←九十壱



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Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時

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