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八十九 ページ14

落ち着いた姉の声とは反対に、Aは内心どきりとしていた。

坂本の携帯電話には、Aの名前が登録されているはずである。
坂本はそれが分かった上で、陸奥に出させたのではないか、そんな嫌な想像がぐるぐると頭の中を回っていた。


「あの、坂本さんは…」



「坂本?あの馬鹿なら」


耳に当てた携帯電話がひょいと宙へ浮く。
携帯電話のいく先に視線を辿れば、









「わしならここぜよ、A」




坂本はにこりと笑い、Aの携帯電話の電源を切った。


.

.

.



「いやあ、すまんのう。携帯、船に忘れてしもうてのう。商談に行く陸奥に任せといたんじゃあ」


あははと坂本は呑気に笑う。
そんな坂本と打って変わって、Aは泣きそうな顔をしていた。
坂本は座るAを覗き込むようにしゃがんだ。
そして、



「わしに何の用じゃ。A」



と優しい声で尋ねた。
その瞳は、美しく深い青色をしていて。



(私の好きな坂本さんの色だ)



ぽろぽろと涙をこぼれ落ちる。



「私、坂本さんにひどいこと言いました。銀さんに言われて気づいたんです。
坂本さん、実は」



私に手を出してなかったんじゃないんですかと、掠れた声で問いかけた。
それに坂本は目を細める。



「確かに、金時やおまんが言うように、手を出してなか。Aが泥酔し、自分で脱ぎ出したんじゃあ」



「うわ…私、本当情け無い」



「わしも普段寝る時裸族やし、勘違いさせたのう。すまんかった」



坂本はしもうたのう、と眉を下げて笑った。
Aは坂本にしがみつくようにして抱きつく。



「あと、私真選組の人達に頼まれてすまいるで働くってこと言ってませんでしたし」



「それはあ、わしの方が悪いぜよ。おまんの妬いた顔が見とうて、すまいるに連れて行ったしのう。…妬いた顔可愛かったのう」



「…またすまいるで働こうかな」



「あー悪かった悪かった!もう働かんどくれぃ」



懇願する坂本が愛おしくなり、Aの泣き顔が笑顔に変わる。
Aは胸元から分厚い封筒を取り出し、


「話をしていなかったとはいえ、坂本さんのお陰で事件も解決したも同然です。こちらはお返しします」


坂本がすまいるでAに使ったお金を手渡した。
坂本は断ったが、女は断固として引き下がらなかった。
封筒を渋々受け取り、坂本はAの頭にぽんと手を置く。



「わしのナンバーワンを、すまいるでもナンバーワンにしたかったんじゃ」




坂本は歯を見せて笑った。

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Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時

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