【ヒロアカ】死柄木弔の忠犬５ (ページ16)

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「全部思い出した」

「えっ」

不意に懐かしむような顔で窓の外を眺めながら、弔さんは言った。
何をなんて聞くのは野暮だろう。
おそらく、弔さんの言う"先生に拾われる前までの記憶"のこと。

「それは…お伺いしても…？」

おずおずと聞いてみると弔さんは少し笑って目を細めて、

「いや、話すほどのことじゃなかった」

「…そう、なんですか？」

「あぁ」

本当に大したことなかった風に言うけど、そんなわけがないだろう。
けど弔さんは話す気がない様なのでこれ以上詮索するようなことはしなかった。
そして記憶を取り戻した拍子にそれまで弔さんが個性を無意識に抑制していたリミッターが外れ、本来の崩壊の力をも取り戻したのだという。
本来ならば五指でなくとも発動し伝播していくというのだから驚きだ。
個性が進化したというよりは元に戻ったというのが現状らしい。

「あ、そうだ」

弔さんが目覚めたら渡そうと思っていた物を思い出した。
弔さんにとって大切なもの。

「これ、瓦礫の中から一つだけ見つけました！」

弔さんの精神安定剤ともいえる必需品、白い手だ。
これがなければ弔さんは落ち着かないと知っていたので、退院してすぐに瓦礫の中を探し回って一つだけ見つけ出した。

「…あれ？」

けど弔さんは思ったより喜んではくれなくて、すぐに受け取りもしないその様子に首を傾げた。
この反応は余計なお世話ってやつだっただろうかと不安になっているとようやくそれは弔さんの手に渡って、しばらく考え込む様にじっと見つめていた。

「ありがとな。貰っとく」

「…！はい！」
　
　
　