【名探偵コナン】それ、疲れません？【降谷零】

Case29 ミステリートレイン ページ30

安室さんは別の用事があるらしく、

別れたのちに、部屋へ戻ると、

哀ちゃんはそっと私の服の裾を放した。


『……哀ちゃん？』

「服、伸びちゃったわね。

ごめんなさい」

『全然大丈夫だよ。

なにか、あった？』


他の子たちが気に止めないよう平然を装いながら、

隣の哀ちゃんに小声で声をかけた。


「………いえ。

けど、Aさん」


哀ちゃんは、震える瞳で私を見て、


「………この列車、何か嫌な感じがしない…？」


と、また、

私の服をつかんだ。


(……これは…)


きっと、殺人事件があったから…とかではない。

これまで、様々な殺人事件があったが、

哀ちゃんがここまで怯え、恐怖を示すことはそうそうなかった。


『……そう、思うよ』


博士と少年探偵団が話をしている様子をみながら、

先ほどすれ違った男のことを思い出した。



「えぇ！？毛利探偵事務所に送ったじゃと！？
先週のキャンプの映像をか！？」


阿笠博士の声に視線をあげた。


「えぇ…助けてもらった女の人にちゃんとお礼がしたかったので…。
名探偵ならどこの誰かを調べられると思って…」


光彦くんのその言葉に、

哀ちゃんの顔は青くなっていく。


『……哀ちゃん…………？』

「……さ、か…」


ポツリ、と呟いた彼女の顔は、

今にも壊れてしまいそうだった。


「ネットが普及してる今なら、
動画を乗せて、その人を探すこともできると思うけど…」

「それって、その人からすればいい迷惑じゃない？」

「うーん……それもそうかぁ…」


動画に写っていた女性。

それが毛利探偵事務所に送られた。

その話を聞いて、彼女の表情はより険しくなった。


(……動画に写っていた女性と哀ちゃん。


なにか、関わりがあるとみえるが……)


あまりにも情報が少ない。

黙って思考を巡らせていると、

隣の哀ちゃんの携帯がバイブ音を発した。


どうやらメールのようだ。


(今の小学生も携帯を持つのか…)


私が携帯を持ったのは高校からだ。

時代の流れとは怖い。


チラリと哀ちゃんを見れば、

また、険しい顔をしていた。


(……メール)


哀ちゃんが見つめるその画面には、




"覚悟は決まった？




Vermouth"


(Vermouth…)


ベルモット………

確かそれは…



(お酒の………名前……)




ドクン



と、大きく鼓動が響いた。


(黒の、組織…)

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