【実.況.者】お隣さんの通勤事情【蘭.た.ん】 (ページ1)

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いつも隣の、お隣さんページ1

いつも隣の、お隣さん。
毎日の通勤電車で毎回隣になる、お隣さん。

名前も知らないお隣さんは、女性だった。

バリキャリのように見える彼女は、毎日の通勤電車で音楽を聴く。イヤホンを耳に入れて、目を閉じるのだ。そして時々、柔らかい笑みを浮かべている。

多少の音漏れをしているが、お隣さんの俺にしか聞こえていないようで、彼女に注意する人は誰もいない。

そんな空間が毎日の楽しみになりつつあるんだ。お隣さんの彼女は何も思っていないだろうけど。

…こう見ると俺キモいな。

駅に到着すると、彼女はイヤホンを取り外す。

その瞬間に、彼女の目つきが少しばかり鋭くなるのが俺は好き…なんだけど。
そして背筋を伸ばして電車を出る。

とても俺にはできない切替の速さだ。すごいなぁ…

…とかなんだか思ってたら、ほら。彼女と目が合った。一瞬だったが。

「あ……」
「……」

すぐに目を逸らされたが、初めて彼女が言葉を発した気がした。
少し嬉しいと思ってしまった。

声、思いの外低かったな。

そんなことをぼんやりと考えながら電車に揺られる。
澄んでいる、とは決して言えないであろうあの声。

だが、身体の芯に響くようなハスキーボイスが、俺の耳に妙に残る。

もう一度聞きたいと思うくらいには、惹かれる声をしていた。