第11話【 呼応する龍 】 ページ11
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ぐんぐんと身体が引き上げられる。
見えない糸で釣り上げられている状態のAは、最早されるがままである。
『 どうせ抵抗したって意味ねぇし。』
聖バラッド学園の屋根が次第に小さく、終いには肉眼で確認できない程のモノとなる。
おい、待て。不安になってきたぞ。
どこまで上に行くつもりだ?
と、流れていた景色が止まる。
そして、Aはこの感覚をよく知っていた。
『 落ちてばっかじゃねえかアァアア!! 』
身体を支えていた糸をぷつりと切られた様に、真っ逆さまに身体は落ちる。
ごうごうと耳を打つ風の音に鼓膜が破れそうだ。
Aは、その間も必死に思考を巡らせる。
魔法が使えないAが助かる方法などそもそもあるのか、そんな疑問が頭の片隅に浮かんではそれを打ち消す。
『 弱気になってどーすんだよッ! 』
考えろ、絶対に何か解決策があるばずだ。
と、今迄黙って肩にしがみついていたチビがキュウキュウと鳴き声を上げ始める。
身振り手振りで何かを伝え様とするチビ。
『 …!チビ、お前天才か! 』
「 キュウ! 」
チビが一生懸命伝え様としていたのは、これだ。
確信を持ったAは、ネックレスに通していた鱗を握り締める。
『 助けてくれ─── …黒き
ぽう、と淡く光を零した鱗が少しずつ熱を持ち始める。
その間も留まる事なく落下を続ける身体は、既にバラッド学園の屋根を目視出来る所まで来ていた。
1秒1秒が長く感じる。
ゆっくりと近付いて来る地面。
目を閉じようとしたその時。
聞き馴染んだ咆哮が大気を震わせ、見慣れた
閉じかけていた瞳を開き、腕を伸ばす。
意味がない行為だと分かっていても、そうせずには居られなかった。
それに応える様に加速し、Aの身体をその背に受け止めた黒き
『 また助けられたな…ありがとう。』
「 グルル… 」
小さく鳴いた
降り立つ際の翼から巻き起こる突風に砂埃が舞う。
運動神経だけは良いA。ひらりと
顔を寄せる彼を撫でながら、チビへの感謝も忘れない。お前が居なかったら死んでたわ。
「 A君、君のクラスが決まったよ。」
満足気な笑みを浮かべたイリスがそう告げた。
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花冠(プロフ) - 2017年…四年前の作品で良い物を見つけてしまった…!もっと先に見つけれたら更新されて行く楽しみが味わえたかも…。すごい読みやすいですし、設定が神です!チビちゃんかわいい… (2021年3月18日 13時) (レス) id: 9f55fa5e42 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 雛菊さん» 有難うございます、とても嬉しいです…!これかも期待に応えられるように精進させて頂きますね!これからもご愛読、よろしくお願い致します! (2017年12月1日 18時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 通知リストにあるかな〜と探すぐらい好きな小説です!とても読みやすくて大好きです!! (2017年11月30日 18時) (レス) id: b475004931 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - 風音迷夜さん» 沢山のお褒めの言葉…ありがとうございます!好きになって頂けてとても嬉しいです…チビは本当に人気がありますねw (2017年11月25日 16時) (レス) id: 14a110e835 (このIDを非表示/違反報告)
風音迷夜 - ありきたりじゃない世界観に分かりやすい説明、この作品好きになりました!チビちゃんかわいいなもう!僕惚れちゃった←チビドラゴンにww (2017年11月22日 21時) (レス) id: b791237619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2017年9月26日 0時