同居生活42 ページ42
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「ったく、何やってんだ冨岡、煉獄ゥ」
『助かった……』
「む!不死川はまた邪魔をするつもりか!!」
「……Aを返してくれ」
高速で流れていた風景が、ピタリと止まる。
同時に、ふわりと浮遊感に包まれて気が付けば私の体は義勇の腕の中から実弥さんの腕の中に移動していた。
夕食の準備をしてくれていた実弥さんが、この状況を見兼ねて助けてくれたらしい。
つまり?実弥さんはあのスピードに付いて行けていたって事ね?
しかも私の体を奪い取る余裕まであったと。
ふわふわとするような感覚が体から抜けず、ぽすりと実弥さんの肩へ頭を預ける。
例えるならば、急上昇急降下がない高速ジェットコースターに乗せられていた気分とでも言うべきか。
「テメェらは本当に加減ってヤツを知らねェよなァ?」
「そんな事はない!」
「あるから言ってんだァ」
「俺は優しくしている」
「優しくと加減は違ェんだよ」
すりすりと髪を撫でる実弥さんの手が気持ちいい。
ご褒美過ぎるんだけど大丈夫?
やっとふわふわとした感覚が抜け始めて、閉じていた瞳を開ける。
同時に目に飛び込んできたのは、実弥さんの横顔。
ちらりと視線をずらせば、ムッとした表情の杏寿郎さんと義勇。
「不死川はいつも良い所を持っていき過ぎだろう!」
「狡い」
「あァ?」
「さり気なくAに触れるのが上手すぎる!」
「俺も触れたい」
「ダメだ!!冨岡は堂々とAに触れているだろう!!」
「いや、テメェも人の事は言えねェだろ、煉獄」
あの。私、実弥さんから抱き上げられてるんですよ。
この会話の中心が私なのだけれど。物理的にも三人の中心にいる訳で……。
流石に恥ずかしい。ちょっと息をするのを躊躇うくらいには恥ずかしい。
私の存在忘れてない?
このままだと、お決まりの言葉を口走ってしまいそうなのですが。
「不死川!俺にもAを抱かせて欲しい!!」
「いや、俺に返してくれ」
「テメェらに任せられるかァ」
『ッッ!!』
いや、私がちょっと考え事してる間に話の内容がぶっ飛び過ぎじゃない?語弊が過ぎますよ、杏寿郎さん。
……けれど、正直な所。
ダメだとわかっていても!!
推し達から取り合いされるなんて幸せ過ぎて!!
叫び声だけは何とか飲み込んだ私を褒めて……。
しかしその後も、三人の応酬は留まる所を知らず。
『私のために争わないで……』
供給過多による私の声が弱々しくリビングに響いたのだった。
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chiaki0708(プロフ) - ムフフが止まりませんでした (2021年12月6日 14時) (レス) @page49 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!好きな設定だと言って貰えて嬉しいです!雰囲気上手だと言って貰えて嬉しい限りです…更新は遅めですがこれからも頑張りますね! (2021年8月11日 12時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - この設定、素敵です!彼らの醸し出す雰囲気上手ですね。このお話に出会えて良かった! (2021年6月27日 21時) (レス) id: ca18a121f6 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - もしゃこうさん» 最高だなんて嬉しいです!私も書いていて楽しいので更新頑張ります!!ふふふ、ニヤニヤして貰えたのなら作者冥利に尽きますね!! (2021年2月9日 0時) (レス) id: 7fde5a79e3 (このIDを非表示/違反報告)
もしゃこう(プロフ) - めっちゃこのお話最高です!続きが気になります!そして自分はこれを読みながら1人部屋でニヤニヤしてますw (2021年2月8日 15時) (レス) id: eecce6b130 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にじ | 作成日時:2021年1月18日 21時