お前の歌が渋谷をハイジャックする (ページ3)

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三曲目ページ3

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『はぁっ、はっ！…ゴホッっ…』

走り過ぎて過換気になる

昔から軽度の喘息もちだった

久々に大勢の人の注目を浴びたからか

動悸が凄い…

中庭のベンチに倒れこむ

『…っは、…ふぅ、駄目だなぁ…』

やはり私は芸能人に相応しくない

「大丈夫か？」

目の前に差し出されたペットボトル

『へ…あ、さっきの』

晃一「吉野晃一や」

何、追いかけてきたの…？

晃一「なんやねんそのふてこい顔」

『私に何か用ですか？』

晃一「んー…用ってゆうか？

単刀直入に言うと…

俺とバンド組まん？」

は？

まだ冷たい春の風が吹く

『…頭おかしいの？

私、シンガーソングライターだけど』

晃一「芸能人は一般人のこと見下しすぎやわぁ…

俺アンタより一個上。一応先輩な？

…シンガーソングライターね笑」

小馬鹿にしたように微笑む吉野とかいう男が気に食わない

私のファンじゃなかったの？

結局貴方も売れない私のことを馬鹿にしてたのね

『…話になんない

私行くわ…』

晃一「待てや」

引き止められるのは今日で二度目だ

晃一「…アンタもう引退する気やろ？」

『は？』

そんなこと一言も言ってない

…マネージャーにしか言ってない

晃一「二年間ファンしとったんや

そんくらい分かる…

それに俺だってボーカリストの端くれや」

…この人もボーカリストなんだ

『…それはどうも』

晃一「一人で作るより四人で作ろや

絶対楽しいで！」

お気楽に笑う吉野

アンタに音楽の何が分かるの？

『分かったような口聞かないでよ…

私は…！！！』

晃一「何？音楽が嫌いとでも言うつもりか？」

本当に何だこの男は

初対面のアンタなんかになんでそんなに深入りされなきゃいけないの？

『…嫌い…だよ…っ』

音楽も…音楽にアツイ奴も…

声を震わせると

吉野は何も言わなかった

代わりに切なそうな表情だけ

『…帰る』

なんでアンタに哀れられなきゃいけない訳？

あの後吉野は追ってこなかった

ファンとして失望でもしたのだろうか

ちょっとだけ、

二年間私の歌を聴いてくれてた人にあの言葉は無かったかななんて

まぁ、もうどうでもいいや

家に帰るとマネージャーから次の曲をかけとメッセージがあった

携帯をベッドに投げた