六十四刻 【10.22。修正】 ページ15
【慶応二年十二月】
肌寒さを覚えてブルりと震えて天窓を見上げると、今日は空気がに澄んでいるからか、いつも以上に月が幻想的で美しく見えた
はあ、と吐き出した息がとても白い。書きかけの文に視線を落として、そろそろ寝ようかと、天窓を閉めて布団を敷き始めたとき
トントンとノックの音の後に、「A様、起きていらっしゃいますか?」と、朧の声が聴こえた。こんな夜分にどうしたのだろうと思いながら
扉を開けると手燭を持った朧がにっこりと、妖艶にも見える微笑を浮かべていた。どうしたのかと尋ねてみると
朧「今宵は月がとても綺麗なので、一緒に月見酒でも、と思いまして。迷惑でしたか?」
A『月見酒か、風流でいいね。ちょっと待ってね』
濃紺色の羽織を掴んで袖は通さずに肩にかけて、部屋をでた。部屋を出て、階段を上って右側に位置する右京の部屋へと向かう
閉じられていた襖を開けば、静寂が主不在を報せる。この部屋の主である右京は今現在千鶴の潜入捜査の隠密護衛として送り込んでいる為、彼は今この部屋にはいない
窓際には既に二つの御猪口(おちょこ)とお銚子が一つ、ポツンと置いてあった。窓枠に腰掛けて、御猪口に含む程度の酒を注いで、ゆっくりと飲み下す
A『お前も飲みなよ。ほら』
御猪口に酒を注いで渡すと、朧は「ありがとうございます」と言って飲み干した。その姿に微笑んで、朧へと向けていた視線を月へと移した
のんびりと酒を楽しむ俺に、朧はこう言った
朧「お慕い申しております」
___うすうす気づいてはいた、朧が俺に好意をよせていることに。俺も好きか嫌いかで言ったら、朧の事は恋愛寄りの好きだ。だが俺は自分の心に気づいてしまうのが怖くて、平成の世に遺してきた皐月に申し訳ないのもあるが、俺が死んでしまったとき悲しませるのは嫌だ
何よりも、幸せを掴んでしまったら手放し難くなってしまう。幼い頃よりしていた覚悟が揺らいでしまい願ってしまう、゛生きたい゛と、寄り添って共に歩んで行きたいと
俺が生きる道を選んでしまえば、物語を変えてしまう可能性が高い
A『・・・・・俺なんか、やめとけよ。お前が泣いて、好きにならなきゃよかったって、後悔するだけだよ』
朧「・・・あなたは、ナニを恐れているのですか?」
突然の問いかけに戸惑う
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新選組(プロフ) - 奈々さん» コメントありがとうございます。ちまちました亀更新ですが、頑張らせていただきます^^ (2016年11月9日 21時) (レス) id: 99972413c8 (このIDを非表示/違反報告)
奈々 - ファイト! (2016年11月9日 20時) (レス) id: e665f2dd13 (このIDを非表示/違反報告)
新選組(プロフ) - アズトさん» 頑張らせていただきます! (2015年10月4日 15時) (レス) id: edf288500b (このIDを非表示/違反報告)
アズト(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張って下さい!! (2015年10月4日 15時) (携帯から) (レス) id: d14f271b06 (このIDを非表示/違反報告)
新選組(プロフ) - 未桜さん» 頑張ります! (2015年8月23日 12時) (レス) id: 188fe80e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新選組 | 作成日時:2015年6月9日 19時