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どこからか水滴の滴る音が響く。
室内についてある窓は薄汚れていて、
頬にひりひりと感じる痛み。
縄で拘束された手足。
床に転がる破壊されたケータイ。
私の隣では数十分前まで一緒にいた友達が、頭から血を流して気を失っている。
「案外楽勝だったな。お前」
取り囲んでいる複数人の
彼女と私を此処に連れてきた誘拐犯。
『……何故、私たちを誘拐したんですか』
睨みながらそう尋ねると、黒子頭巾のような覆面をしている他の奴らとは違い、唯一顔を露出させているリーダー格の男は薄く笑った。
____数十分前。
「ねえAちゃん、これ何??」
午前の部が終わり、公園でブルーシートを敷いていたら、不意に背後から声がかかる。
作業を止め、『んー?』と言って振り返る。
すると昨日最後まで一緒に教室で話していた女の子、
『ちょっ!?茅乃!!』
「え?」
すぐに彼女の手から奪い取るように回収して、ついでにリュックも回収する。
ドッドッドッと心臓が煩く跳ね、冷や汗を垂らしながらリュックを抱えている私に彼女は不思議そうに首を傾げていた。
「それ何?御札みたいだけど…」
『えっと……これは』
何と言うべきか、思考を巡らせる。
相手は呪術どころか呪いの存在すら知らない一般人だ。今後も知らない方が彼女のためである。
それに下手したら私は御札を持ち歩く頭のおかしいアレな病を患っている印象を持たれ兼ねない。
悩みに悩み、あるひとつの誤魔化しに辿り着いた
『これは、
「栞にもなる御守り?」
『……うん。ほら、押花がされてるでしょ?』
彼女以外には見えないような角度で呪符を見せる。茅乃は覗き込むように見て、目を輝かせた。
「わ、本当だ綺麗…!」
『ね?この前本屋さんでお店の人に貰ったんだ』
「へえぇそうなんだ。いいなぁ…私も行ったらまだ貰えるかな?」
『どうだろ、かなり前だからもう無いんじゃないかな』
「そっかぁ残念…あ、私敷くの手伝うよ」
他の子なら見られた時点で詰んでいるが、茅乃は純粋というか抜けている所があるので素直に受け入れてくれた。
『……うん』
無垢な親友に嘘つくのは良心がキリキリと痛んだ。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時