137話 ページ47
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その日。
術式の情報を記憶から消された上層部や悟と同様に、私自身も祖父によって記憶を失った。
自分の名前以外を全て失った私は、両親や祖父からは"事故に遭って記憶喪失になった"と聞かされた。
呪術界から身を引くにしても私は呪いが見えるので、身を守れる一通りの術式についてを基礎から習い直した。
____2年後。
記憶を失う前の私の願いが叶い、自営業で花屋を経営するに至った。
そして店が開店した頃に程なくして。祖父は責務を果たしたかのように、ひっそりと自室の座椅子で息を引き取った。
祖父が亡くなってすぐのことだが、全ての術式が格段に向上した。記憶のない私は自覚がなかったが、今思うと祖父から受け継いだのだと思う。
私の記憶を消した理由は分からない。優しい祖父の事だから、もしかしたら一生苦しむことのないよう彼なりの気遣いをしてくれたのかもしれない。
10年という長い年月をかけて、真っ白だった記憶のピースが色を取り戻した。
◇◇◇
｢A、大丈夫？｣
『……五条さん…っ！！』
懐かしく、愛おしくも感じる五条さん。
すっかり涙で濡れてしまった顔を、遠慮なく彼の胸に押し当てた。左手はちゃんと握ったままだ。
『なんで、私のこと覚えていたんですか』
｢記憶が消えたのは一瞬だよ。お祖父さんに記憶を消された後、運が良かったのかすぐに術式以外ほとんどの記憶を自力で取り戻したんだ｣
『……流石ですね』
なんせ最強だからね。と笑う。
｢ずっと謝りたかった。あの日、ガキだった僕は君に酷いことをしてしまった｣
『私も、突き放してごめんなさい』
彼は首を振って、私を抱き締めた。
｢良ければもう一度だけ、チャンスが欲しい｣
五条さんの言葉に答える代わりに、彼の背中に手を回してこれ以上ないくらいぐりぐりと押し付ける。
それから顔を離して、視線を絡めた。
『……五条さ…悟は、私のこと好き？』
｢うん。10年経っても変わらず君が好きだよ｣
彼は少しの躊躇いもなく、まるで昔からそれを言う機会を切望していたかのように言った。
『私も…っ……悟が、好きです』
｢…遠回りになったけど、僕と結婚してくれる？｣
『……私なんかでいいんですか』
｢他の誰でもない。君がいいんだ｣
硝子さんが見ているのにも関わらず、悟はそっと私に口づけを落とした。
｢もう僕から、離れないでね｣
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます！そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (
レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます！本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか？続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怠慢のにぼし | 作成日時：2021年1月19日 20時
