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「一槻サン?」



「いや、気にしないでくれ」


彼は腕時計に目をやってから、頷く。


「もうそろそろ行かないといけない時間だ」


「何処に?」


「会議室だよ。高専の」


「地位は剥奪されるのに、出席出来るんですか」


「いや、出来ないね。お呼ばれはされてないから」



噛み合わない話に疑問を持つ。
それに答えるように彼は言った。



「彼らにせめてものの嫌がらせをしてくるんだよ」


「……嫌がらせ?」


「後々面倒だからAと篠崎家相伝の術式についての情報を抹消してくるつもりなんだ。まあ前者の方はぼんやりとだがね」


「会議で集まる上層部を皆殺しにする。と?」


「ははは。そんな物騒なことなんてしないさ」








「____記憶を消すんだよ。こんなふうにね」


「はっ!?」



瞬く間に彼が目の前へと移動して、頭部を掴まれる。咄嗟に術式で弾き飛ばした。


しかし数メートルしか後退していない。何らかの術式をぶつけて威力を軽減したのだろう。





痛みが頭の中を走る。
頭痛に悶えながら睨むと、彼はにっこり笑う。



「昨日まで、Aや私の使っていた術式を思い出せるかい」


「そんなん……」



思い出せない。


あんなにも時間をかけてAの練習に付き合っていたのに、何を練習したのかが思い出せなくなってしまった。




「次はAの記憶だ」


「……させませんよ」




掌印を構える。
もう触れさせない。


アイツの記憶だけは、絶対に消させない。


あの日々を忘れなんてしない。




「怪我したくないなら何もせず高専行った方がいいですよ一槻サン」


「遠慮しておくよ。真っ向から戦ったら私に勝ち目はないだろうけどね」


「……これで頭冷やしてください」



術式反転「(あか)




かなり加減をしてぶつける。
それでも大人1人を吹き飛ばすのには十分だ。


灯篭や木々を薙ぎ倒して吹っ飛ぶ。

彼がこれくらいでどうにかなるとは思わないが、それでも相手はかなり年配だ。少し不安になる。







「相変わらず凄いな。君の術式は」


「は!?後ろ!?」



背後から声をかけられる。
振り返るとピンピンした様子の彼が立っていた。


絶対当てた筈だ。しっかり吹き飛んだのをこの目で確認した。



「弱者には弱者なりの戦い方ってものがあるんだ」



そう言って掌印を構える。
術式発動の鍵が"触れること"という考えが間違いだった。



無限も意味が無い。




白雛芥子(シロヒナゲシ)



忘却。

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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時

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