48 ページ38
悟の口から発せられた言葉を反芻するように噛み締める。
『そっか』
起き上がって彼を見下ろす。
悟は訝しげに私を見ていた。
｢どうしたんだよ急に｣
『ううん、なんでもない』
立ち上がった彼をグイグイと外へ押す。
震える唇を噛んで堪えた。
『……もう大丈夫だから帰って？』
｢は？本当になんなんだよ｣
『なんでもないって』
｢お前涙目じゃ……『分かんないの？』え？｣
『……どうしてか、分かんない？』
見開いた彼の瞳が微かに揺れた。
人のことを言えたものではないが、ちょっと鈍いなぁなんて思う。
｢何があったの｣
悟は落ち着いた口調で聞いた。
『今はまだ答えられない』
俯いて首を振った。
祖父が打ち明けるより先に彼が知れば、あの男性が言うように暴れるだろう。すると身内が次々に見せしめとして殺されるかもしれない。
｢言えよ｣
『ごめん』
｢なんで言えねえんだよ｣
『……ごめん』
｢出来ることなら俺が何とかしてやるから｣
______別に、何とも思ってねえよ。
悟の優しい言葉とさっきの言葉が重なる。
深く息を吸って、また彼を見上げた。
『好きでもない相手に、よくそこまで言えますね』
悟は面食らったようにぽかんとした。
だがすぐに何かを言おうと口を開くも、
｢悟様。こちらにいらっしゃいましたか｣
貼り付けたような笑みを浮かべた男性が、いつの間にか私たちの横に立っていた。
｢あ？お前は……｣
｢五条家当主様のお付きの者です。当主様から、用があるので悟様を連れ戻すように。と仰せつかっております｣
｢用ってなんだよ｣
｢身内の話ですので、ここでは申し上げられません｣
行きましょう。と男性が手で悟を誘導する。
『さ、悟っ……！』
咄嗟に伸ばしてしまった腕をその男性が掴む。
とても強い力で握られた。
それから男性が私の顔の横で囁く。
｢……身の程を知りなさい。分かっているでしょう｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 292人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます！そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (
レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます！本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか？続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怠慢のにぼし | 作成日時：2021年1月19日 20時
