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「一槻様」
「あぁ、運んでくれてありがとう」
駐車場には先程の高専関係者の人が車の前で待っていた。車内には眠っている茅乃の母親が見えた。
「……茅乃さん。君にはAと仲良くしてくれたこと、本当に感謝している」
祖父は茅乃の顔を見ると目を伏せて、いつもの温和な笑みを影で隠しながら言った。
「いえ、とんでもないです。私だってAちゃんには感謝し切れません」
本人は照れ臭そうに笑う。
祖父は「そうか」と小さく呟いて、それから何かを決心したように口を開いた。
「だからこそ、正直に告白しようと思うんだ」
祖父の放った一言に、
とてつもなく嫌な予感がした。
「……Aは転校させて、茅乃さんは今日の出来事と、それからAに関する一切の記憶を消させてもらうことにした」
「え、」
『なっ!?』
私たちの反応を彼は当然だ、といった表情で受け取った。
『今日の記憶だけ消すんじゃ駄目なんですか』
「君たちが誘拐されたと言う話は同級生の耳にも届いている。彼らの記憶も同様に消すつもりではあるが、少し問題が出てきてしまうんだ」
「問題…?」
「稀にね、関わりのある場所や人物。そういうちょっとしたきっかけで消したはずの記憶が戻ってしまう者もいるんだよ」
関わりのある人物。
私と茅乃。
「だからリスクを避けるため、出来る限りの措置を取れと言うのがお偉いさん方の結論だ」
『……でも、茅乃の方は大丈夫なんですか』
「それは私が交渉した。茅乃さんには最低限度のみの措置しか行わないという約束を取り付けたから問題ない。何かあれば私が責任を取るとね」
『そうなんですね…ありがとうございます』
「ま、待ってください!Aちゃんのことを忘れてしまうなんて絶対嫌です!私、誰にも絶対言いませんから!!」
『茅乃…』
「……私も、そうなるだろうと精一杯努力したよ」
顔を顰めた祖父は「だが」と続ける
「すまないが、もう決まったことなんだ」
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時