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男は私の腕を掴んで自分の元に引き寄せる。
「それ以上動くな。五条悟」
首にナイフが突きつけられた私を見て、悟は立ち止まった。
「おい、1人で来てねえのはどういうことだ?」
「私がついて来たんだよ。じゃないと彼、歯止めが効かなくなるから」
夏油さんが少し声を張って答えた。
彼の声に一瞬だけ男の視線が夏油さんの方へと向いた。それを見計らって悟は距離を詰めて男の鳩尾を殴りつける。
「がっ!?」
吹っ飛んだ先で受身を取ってから男がナイフ片手に突っ込む。しかし男は2、3度攻防を繰り返すと襟元を掴まれて壁へ叩きつけられた。
「お前の持ってる辺鄙な術式じゃ無理だな」
「……クソが。面倒だなその眼」
男が悔しそうに呻く。
『……術式?』
「コイツの術式は相手の視覚情報への遅延。相手から見えるコイツの動きは術式効果で少し遅く見えんだよ」
……なるほど。そういう術式だったのか。
つまり先程の私のように、蹴りが来る。と思った時にはもう遅いというわけだ。
「足りねぇ実力差を人質使って補えば勝てるとでも思ったか?随分と舐められたもんだな」
悟はそう言って私をちらっと見て声を投げた。
「A。頬殴ったのはコイツか?」
『え、うん』
私が肯定するより若干早めに男の右頬を殴った。
殴り飛ばされたのが幸いで、拘束から逃げられたリーダーの男は振り返りながら手下へ叫ぶ。
「クッソ、おいお前ら援護はどうし____」
振り向くと、20はいた他の誘拐犯たちは全員夏油さんが単独でフルボッコにしていたらしく、床に伸びていた。
「後はお前だけだオッサン」
悟も夏油さんも、術式を使っていない。
素の力だけでこの場の呪詛師をねじ伏せたのだ。
彼らにしたら、この誘拐犯たちはもはや足元にすら及ばない。
圧倒的な力の差をを身をもって感じたのか、男の顔が恐怖で埋め尽くされる。
「や、やめ……」
「お前が今までに殺してきた人たちがもし同じことを言ってたら、殺さなかったのかよ」
勢いよくぶん殴られ、壁に打ち付けられたリーダーの男はずるずると床に伸びた。
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怠慢のにぼし(プロフ) - 緑の白猫さん» ご感想ありがとうございます!そう言っていただけて、構成に頭を悩ませた時間も無駄ではなかったのだと嬉しく思います。 (2021年2月23日 22時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ストーリーの構成も上手いし、時間軸の移動の仕方も上手いしで…。堪らなく大好きな一作です! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
怠慢のにぼし(プロフ) - 琥珀さん» こちらこそ初めまして(*´ч ` *)こちらは五条悟オチになります。嬉しいお言葉ありがとうございます!本当に励みになります (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8a1e62ce6d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 怠慢のにぼしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月20日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怠慢のにぼし | 作成日時:2021年1月19日 20時