サクマくんは食べたい

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平日はいつも緩い


映えを求めた大学生とか保育園帰りの親子とか


全ての席が埋まって外まで行列の出来る土日とは格段に仕事量が違う


ショーケースのケーキたちもまだたんまり残ってる


んん、今日はこのレモンケーキかなあ


ああ、でも先週からの新作のチェリーパイもいいなあ


残れば持ち帰り自由なバイトの特権




「なあなあ〜」

『……』

「まだ怒ってんの？」

『……仕事してください。日雇いなんですから。』




新規のお客さんを席に案内した佐久間先輩がショーケースから身を乗り出し話しかけてくる


ふいっと下を向いて冷たくあしらう


自分で言っておきながら やっぱりちょっと後悔、


タイミングよくベルが鳴り さも当たり前のように「はあ〜い」なんて佐久間先輩は注文を取りに行く


でも 伝票の文字は 酷く汚くて


ふっ、と表情筋が緩んでしまった


それから それなりに忙しくて話しかけてくることもなく閉店時間になる


ショーケースに残ったケーキを一旦箱詰めしていると


キッチン担当のバイトさんがホールの掃除をする佐久間先輩を指さしながら《あの人誰っスか？》《新入り？》と聞いてくる


たしかこの子たちも同い年か一個下だったような。


ラウくん以外とそこまで話さないからよく知らないけど




『きょ、だけの…日雇い？みたいな』

《へえ》

《中まですげえ声聞こえてきたんで気になって》

《ラウールの時とはまた別の感じの》

《日雇いなんて勿体ないっスね》

『あ、はは…』




笑顔が引き攣る


初めて話したわけじゃないけどなかなかのグイグイ系


話終わると《お疲れ様でした〜》とバックヤードに2人して入っていく


ふぅとひと息ついて残りのケーキを片し


ショーケースの中やレジ台、コーヒーメーカーなんかを片付けていく


店内を流れる洋楽だけが救いだ


掃除は終わってしまったけど 佐久間先輩に声が掛けられない


どうしようかと足元を見ながら立っていると


ふらり、と気配を感じて 視界に履き潰されたローファーが映り込む




「終わった」

『あ、ありがとうございます』

「…さっきの奴らと何話してたの」

『……別に、…ケーキ好きなの持って帰ってください』

「仲良いの」

『……今日は、手伝いありがとうございました …制服は洗わなくていいので』

「ねえ、」

『……私まだやることあるので、先に帰っ、』

「こっち見てよ、」









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