25.（side_juri~ ページ25
side_juri
目覚めるとそこは、いつもと違う天井、布団、部屋…
一瞬焦ったが、
すぐにここがAの家だったことを思い出した。
眩しい太陽の光に導かれるように、
ベランダの方に近づく。
網戸から吹き抜けるよそ風が心地よく俺を包み込む。
ベランダで雀が小さく飛び跳ねている。
｢いい朝だな…｣
そんな独り言を漏らしてしまうくらい、
俺はここが気に入ったらしい。
1階に降りると、いい匂いがした。
匂いにつられ、向かった先は台所だった。
｢おはようございます｣
朝からテキパキと台所で動きまわるおばさんに声をかける。
おばさん｢あら樹くん、早いのね。
朝ごはんできたから…
悪いけど、Aを起こしてきてくれないかしら？｣
おばさんに頼まれ、
俺は再び２階に上がりAの部屋のドアを開けようとした…が、開かない。
どうやら鍵をかけられたようだ。
仕方なく、自分の部屋からベランダに出てAの部屋に侵入することにした。
案の定、Aはベランダの戸には鍵をかけておらずすんなりと入ることができた。
Aの部屋に入るのは初めてで、
軽く辺りを見渡した。
良くも悪くもない、シンプルな部屋。
女子高生の部屋にしては、少し地味だけど、
むしろそれがAらしくて良かった。
でも、勉強机の端にひっそりと置かれている口紅や香水が控えめに女の子らしさをアピールしている。
それにちょっと、ドキッとしてしまう。
そんな気持ちを誤魔化すように、
Aのベッドに近寄り顔を覗き込む。
Aは小さく寝息を立てて、
気持ちよさそうに眠っていた。
眠っている女の子は、無条件で可愛い。
悔しいけどもちろんそれは、
目の前のAにも当てはまる。
だから、起こしたくなかった。
もう少しだけ、この寝顔を見ていたかった。
そんなことを思っていると、
Aがもぞもぞと動き出した。
やべ、起きる…
俺は慌てて、綻んでしまった顔に力を入れ直した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 237人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
