77* ついに納涼祭 ページ29
カララ……
「んんん〜いい天気!」
自室のブラインドを開けて夏の匂いを取り込む。
初夏の陽気を身体中で受け止めて、大きく伸びをした。
時刻は正午を過ぎた。
南向きの部屋は眩しい太陽に照らされクーラーをつけても熱されていた。
「…もう帰っちゃったんだ」
総悟、と呼びかけても隣の部屋から応答はなかった。
リビングに行けば、広いテーブルの真ん中にメモが一枚、
"朝から可愛い寝顔ありがとさん。また今夜"
キッチンを覗けば、水切りトレーの上にまだ少し濡れた皿があった。
大方昨日作ったパスタの残りを食べて帰ったのだろう。
「また今夜、ね」
今日は待ちに待った夏祭。
独り言を呟いて部屋に戻ると、自室から繋がる総悟の部屋に、紺色の向日葵の浴衣が掛けられているのが見えた。
「さて、……着付けでもしてもらうかね」
*
「――…これでよし、と」
「ありがとうございました、お妙さん」
「いいのよこれ位。若いって良いわね〜」
きゅ、と最後に帯を締めて、ふうと息をつくお妙。
自身では着付けできないAが頼ったのは彼女だった。
久しぶりの和服に身が引き締まって、着崩れしないよう丁寧にお辞儀する。
「それじゃ…一旦家に帰りますね」
「あらちょっと待ちなさいな。まだ時間もあるんでしょう?
せっかくなんだから……もっと可愛くなっちゃいなさい」
「え、ええ…?」
小さな歩幅で歩み出すと、簡単に掴まれた腕。
あれよあれよと、お妙の手によってAはすっかり為すがままだった。
「この時代化粧品なんてあったんだ……」
「この時代?」
「あ、いやいや…! 何も!」
「まあ、Aちゃんは可愛いからお化粧なんていらないものね。
…だけど今日は、世界一可愛くしてあげるからね!」
「え、えっと…!?」
あうあうとAがお妙に応えようとしたが、お粉を叩き込まれた事で、彼女は抵抗をやめることにした。
*
「……」
「―…お妙さん? 終わりました?」
口紅を塗り終えたところで、お妙の手が止まる。
不思議に思ってAが目を開けると、こちらを見て彼女は固まっていた。
「……どうしましょう。ものすごく可愛い」
「ええ…!?」
あのお妙がべた褒めする程の美しい姿。
成る程彼女はいつも愛嬌があるが、化粧と髪型の効果は絶大だった。
――これは、あの男がどんな反応をするのかが楽しみだ。
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桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時