# 8 ページ8
.
深澤「家ないってこと？」
「えっと……そう、だね」
深澤「じゃあ、シェアハウス来たらよくない？」
「なぁ、照」と同意を求める深澤くんに、岩本さんも「まぁ、そうだな」なんて納得している。
シェアハウスって、どういうこと？
深澤「ま、話は車に乗ってからね。ほらほら」
深澤くんがそう言って、私の背中をぐいぐいと押す。
そのまま後ろに放り込まれると、助手席に座るかと思われた深澤くんが隣に乗り込んだ。
ゆっくりと発進した車の中で、話の続きを聞く。
深澤「俺らシェアハウスに住んでんの。まぁ、今のところ俺と照の二人だけなんだけど」
岩本「部屋余ってるからおいでよ。Aさんなら大丈夫そうだし」
「で、でも……」
岩本「無理にとは言わないよ。でも、カプセルホテルに毎日泊まるのだって楽じゃないでしょ？ 金銭面とかさ」
岩本さんが言ってることはごもっともだ。
カプセルホテルにお世話になって1ヶ月経つけれど、お金の問題はかなり深刻だった。
物件を探して引っ越すほどの蓄えもなく、コンビニアルバイトじゃ十分な収入もない。
深澤「シェアハウスは照が管理者だから、結構融通利くよ。家賃もめちゃめちゃ安いし」
「毎月2万よ」という深澤くんの言葉に、ごくりと喉が鳴る。
この都会で、月2万は破格だ……。
どんな物件かは見てないからわからないけど、今の私にはとにかくお金がかからない方がいい。
でも、高校時代の元彼と一つ屋根の下というのが決断を鈍らせる。
岩本「まぁ、住んでみてダメだったらいつでも退去は可能だし。俺、不動産業してるから色々物件探してあげることもできるしさ」
深澤「そうそう、次が見つかるまでの繋ぎでいいじゃん？」
その親切な言葉に、たった一つの憂いも流れた。
「……じゃ、じゃあ、よろしくお願いします」
色々な不安はあれど、何はともあれ住居を確保できて少し安心。
シェアハウスまでは車で30分ほど、都心から少し外れた場所にあるらしい。
途中カプセルホテルに寄ってもらって荷物を纏めて、1ヶ月住んだこの小さな部屋にやっと別れを告げた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サイ(プロフ) - takkimakkiさん» 初めまして、とても嬉しい感想ありがとうございます！皆さんに伝わるように丁寧に綴るのを心がけていたので、そう言っていただけて嬉しいです。不定期更新ではありますが、これからも見守っていただけると励みになります(^^) (2023年3月18日 20時) (
レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めまして！このお話に出会い、一気読みさせていただきました。お話の中に引き込まれて、頭の中でドラマのように思い浮かぶステキな日本語と物語で、大ファンになりました。これからも楽しみにさせていただきます！ (2023年3月16日 9時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - サイさん» え、そんなｯｯ‼︎あんな駄作達なんか、サイ様の足元にも及びませんからｯｯ‼︎でも、アドバイスなど。気付いた点を教えていただけると幸いです。 (2023年1月2日 23時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
サイ(プロフ) - にふらー@低浮上さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます◎細かいところまで見てくださってるんだなと思い嬉しくなりました◎更新頑張ります◎にふらーさんの作品も、時間がある時に読ませてもらいたいなと思います◎ (2023年1月2日 12時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - コメント失礼しますｯｯ‼︎『前の席の岩本くん』が大好きで、作者様が同じだとわかって、心の中で発狂しました笑笑 サイ様の文の書き方など、勉強する点が沢山あるので、続きがとても気になります…‼︎更新、頑張ってくださいｯｯ‼︎ (2023年1月2日 0時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サイ
| 作成日時：2022年11月23日 19時
